王太子主催の夜会。転がる侯爵の死体。王太子は自殺だと断定する。
この瞬間にヒロイン(主人公)は勝機を見出し、凛と異を唱える。
「いいえ、自殺ではありません」
彼女が失ったもののうち、爵位だけは必ず取り戻すという強い決意で。
近代ヨーロッパ的なファンタジー舞台で繰り広げられる、(恋の?)権謀術数ストーリーです。(たぶん。私はそう読みました)
他のレビュワー方がおっしゃるように、エピソードごとのコメントにもあるように、ヒロインがとにかく格好良い。
これは意見を真似したとかではなくて、彼女を一言で形容するならばと問われたとき、多くの方が同じように思うだろうことです。
その格好良さの源は、彼女の知性、決断力、行動力、気高い心のありようと態度、そしてそれらの描写でしょう。
最終話まで読んだあなたは改めて思うはずです。「かっこいい」と。
そして、そうであれば直ぐさま、また第一話を読むことをおすすめします。(何ならそのままもう一周行きましょう)
ほんと、痺れますよ。感嘆のため息が出ます。
緊迫した第一話から始まる、基本シリアスな物語ですが、絶妙に散りばめられた可笑しみもとても良い。そして、タグの「逆ハー(風味)」は伊達じゃありません。
黒・赤・白……と、色が強く印象に残る作品で、薔薇は何色から何色に塗り替えられたのか、と想像するのも楽しい。
一癖も二癖もありそうな男たちを相手に、黒衣の令嬢ヴィクトリアが、その賢さと勇気で目的を遂げようとするお話です。
冒頭からの緊迫したシーンで、すぐに物語の世界に入り込ませてくれます。
転がっている死体を挟み、相対する王太子と令嬢。
「自殺」なのか「他殺」なのか?
そしてそれを主張する各々の思惑とは?
令嬢ヴィクトリアの、気高く強くあろうとする姿に魅了されます。
彼女の周囲の人物たちも、それぞれに個性的かつ魅力的。それらの表現力も高く、思考を巡らせる交渉シーンも才女らしさがあって、読み応えがありました。
逆ハー(風味)ということで、今後の展開をつい予想する楽しみも!
この事件の行きつく先は、どうか皆さま、ご自身の目で確かめてみてください。
特にラストシーンは、最上級の格好良さを保証します。
お勧めします!
導入から一筋縄で行かなさそうな面々に囲まれて、どうなるのかそわそわしながら読み進めましたが、とにかくそんな不安を一掃するくらいに黒衣の令嬢ヴィクトリアがかっこいい!
ただ助けを待つでもなく、運に頼るでもなく、自身の知性と勇気を持って未来を切り拓いていくヴィクトリアに、ただただ魅せられました。甘やかされることをよしとせず、矜持を持って凛と立つヴィクトリア。たくましく度胸がありながら、どこか純粋なヴィクトリア。これは惚れるわ!
もちろん、彼女の周りにはたくさんの(一筋縄では行かなさそうで)魅力的な人物がおり、これからの関係性を想像するのも楽しかったです。
程よいボリュームで読みやすく、最終話のカタルシスもあり、とても面白かったです。
とにかくかっこいい令嬢が見たい方へ、おすすめです。
夜会での衝撃的な場面から幕を開ける本作。
事件にからみ、みずからの家の失われた名誉を取り戻すべく、主人公ヴィクトリアはうごきます。智慧と勇気と、美しい鋭利をもって。
推理要素を含むおはなしですので、内容にはふれません。ですが、ひとつお約束できることがあります。ヴィクトリアの知性あふれる所作とことば、彼女に関わる美麗な青年たち、作者さまらしい緻密でしずやかな情景を追っているうちに、自然と物語の空気感の虜になっていることを。
わたしには、本作は、黒と銀をまとって感ぜられるのです。黒は、黒衣のことでもありますが、なにより、なにものにも屈しないことの象徴。そして、智慧と勇気の象徴たる、銀。世界を切り開く、誇り。
ラストにおいて、わたしは鳥肌をたてながら、そのいろで、塗りつぶされていました。ああ、と、声が出ました。
ぜひ、あなたも、塗りかえられてみてください。