古本屋の恐怖
辺理可付加
古本屋の恐怖
異様な光景だが彼に呼び出された手前、回れ右するわけにもいかない。
「久しぶり」
「……最近おかしいんだ」
当たり
「で、何があったの」
シンイチは答えず、店の一番奥まったところにある本棚を顎で差す。松実が首だけ伸ばしてそちらを見
「げっ!!」
そこには大量のまったく同じ背表紙が。
シンイチが碇ゲ◯ドウのポーズで呟く。
「最近、毎日同じ本が売られにくるんだよ」
「な、なんだって……?」
「多いときは日に三、四回、しかも毎回違う人間が!」
「なんちゅうこと……」
「それが毎日毎日毎日毎日一ヶ月ずっと! 何人もの手によって途切れることなく『桃子らぶらぶ日記♡』が僕のところにやってくるんだよ!!」
「えぇ……。そこはなんか普通にホラーの方がマシだったな……」
「毎度毎度まったく同じの、しかも程度が低いエロ本持ってこられて僕はおかしくなりそうだ!!」
「さてはお前、本の内容の方がメンタルにキてるな?」
松実は震えるシンイチの肩を軽く叩いた。
「よし、任せろ。これでも職業警察官、この怪事件の真相を突き止めてやるよ」
「頼む……」
数日後、松実は古本屋を再訪した。
「おーいシンイチ、真相が分かったぞ!」
「本当か!?」
あれからも途切れることなく有害図書は売りにこられたわけだが、売った人間を尾行した彼がつかんだ真実はこういうことだった。
「ありゃ自費出版爆死して在庫抱えたやつが、友人と手分けして変装しながら売りにきてただけだ。同じ本何冊も売るのが恥ずかしかったんだろうな」
古本屋の恐怖 辺理可付加 @chitose1129
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