その視線――気が付いていた。
くすのきさくら
あっ、私やばい奴なんで。
そろそろ梅の花が満開になるだろうか?いや、今年はちょっと寒かったからまだだろうか?ちなみに私は小学生以来花開くことなくここまで来た。いや、いきなり何を言っているんだ?お前は。という私は
すでに式は終わり体育館やグラウンドでは、記念撮影をしている卒業生たち。それに混ざる一部の在校生たち。そんな姿を遠くから見ながら雑談。または涙ぐむ保護者。という光景などを私は1人で離れた場所から眺めている。
ちなみに、卒業する先輩に挨拶をしに行く予定というのない。いや、私がぼっち。ということではなく。すでに挨拶は昨日の部活中に済ませているからだ。
それに挨拶をしに行くような仲が良かった先輩は部活には居ない。部活以外で会う人もいなかった。って、再度になるけど私ぼっちじゃないからね?部活で孤立していたとかそんなこともないからね?ちゃんと部活に参加していたよ?部活以外のつながりはなかったというか――って、とりあえず私のことはおいておいて、グラウンドを再度私は眺める。
私の視線の先には1つの集団が見えた。多くの同級生。これは卒業生の事。あと、在校生。私たち2年生(余談だが男子2割女子8割。私調べ)に囲まれていて、目立っている生徒。彼がいる。
彼は、
言い方は悪いかもしれないけど、物語に出てくるような超絶イケメン。みんなが先輩を見て、目をハートにしている。とかいう人ではなく。普通にどこにでもいる感じの人なのだが――人を惹きつける何かを持っているのか。彼という存在がその場にいるだけで周りを幸せにしている。というと大げさかもしれないが。でも実際そんな感じだと思う。先輩と話せば自然とみんな笑みがこぼれている。ちなみに私の場合見ているだけで微笑み――おっと、危ない危ない。1人でにやけるところだった。こんなところで1人でニヤニヤとか。危ない人じゃん私。怖っ。
とにかく、常に周りには人が居て、誰にでも優しい先輩だ。
何故私がその集団を見ているか。部活の先輩ということもあるが――理由は他にもある。ほとんどの生徒は知らないと思うし。先輩本人も気が付いてないと思うけど。
実は私。先輩とは小学校から同じ小学校で先輩を知っていた。そして、中学の時も同じ学校で、さらにさらに私は多度先輩と部活も一緒だった。
でも先輩には知られていないと私が思っているには、ちゃんとした理由がある。だって、多度先輩が居るところ人の集まりにいつもなるから。多度先輩が動けば、当たり前のように数十人。下手したら数百人の人が動くことがある。ふと考えると――多度先輩。どこかのボス?という私の考えはほっておいて。
中学の時も先輩が居るだけで、部活は過去最多の在籍者数を記録した。そして、現在の高校の部活でも今のところ歴代最多だとか。多分明日にでもごそっと減ると思うけど。
とにかく。先輩に覚えてもらうにはなかなか大変なのだ。それに先輩自身、風の噂で聞いたのだが。人の名前を覚えるのが大変苦手らしい。今でも友人の顔と名前が一致しないことがあるとか。さすがに同級生は大丈夫らしいが。学年が変わるとはボロボロらしい。
それ大丈夫なの?と思うかもしれないが。思い出してほしい。先輩は常に人に囲まれている。そして毎日のように新しい人も話してくるとか。そんな中でもともと人の名前と顔を覚えるのが苦手と言っている先輩が対応できるか?と、いや、対応できる人もいるとは思うけどね。でも先輩は――って、私甘いというか。先輩寄りすぎ?って、いいでしょ。先輩寄りなんだから。
とにかく。そんな先輩なのだが。そんな先輩がみんな良い。好きというか――先輩の人気に火をつけているというか。とにかく人を集める不思議な先輩なのだ。
それに、いろいろ遠くで思っている私も十二分に昔からなぜかあの先輩に惹きつけられている1人だ。
◆
私のことを話すと、多度先輩と話したのはたった1回だけ。
小学校の時に1回(お察しの方が居るかもしれませんが。そこで一目ぼれですよ)って、中学・高校と同じ部活だったのに、会話すらできなかったという。先輩の周り人多すぎ。あと、私何してるの?
以上である。本当にそれ以外接点はない。先輩とともに何か遊びに行ったとか。思い出が――ということは全く先輩と同じ高校生活も終わろうとしている。
ちなみに私は多度先輩と自己紹介すらちゃんとしたことがない。
小学校の時。初めて先輩と話した際。何とか名前だけは何とか言った気がするが。いやね。もう一瞬だったわけ。即先輩に惹かれたわけ。だからもうドキドキの頭パニックで『――い、いえ――あっ、その――で。あっ。えっと、私――海きゃです――ごめんな――しゃい』確かそんな感じで。嚙みまくり。名前は――とか今言ったが。今思い出した私の記憶からは――ちゃんと言えてなかったと思う。ダメじゃん。
ちなみにこの時の私は遠足中。そうそう遠足が先輩との出会い。これ話しておかないとね。えっ?誰も聞いてない?私が思い出したいから勝手に話すの。
★
私の通っていた小学校は遠足の時1.2年生。3.4年生。5.6年生という組み合わせで遠足に行っていた。小学校に入学して数か月だった私。他の記憶はぼんやりとしか覚えてないが。でも楽しく毎日を過ごしていたと思う。そして先輩との出会いは、遠足の目的地だった公園でだった。
その時の私は、友達と鬼ごっこをして走り回っていた。その時だよ。私夢中で鬼から逃げていて、前をちゃんと見てなかったわけ。そしてドーンよ。いきなり何かにぶつかって――尻もちを――ではなく。受け止められた。優しく抱えられた。
一瞬何が起こったかわからなかったよ。私は走っていたはずなのに、何かにぶつかって『鼻痛い!』からの。ちょっと泣きそうになっていたのだが。その時だよ。あれ?私抱かれている?ぶつかってその衝撃で後ろに尻もちを――と思ったのに。抱きかかえられていた。そして気が付けば、そこそこ近いところに知らない男の子の顔。『――わぁお』だよ。いきなりでドキドキ。
「ごめん。大丈夫?ケガしてない?」
すると、男の子が話しかけてきた。私より体が大きい。そして、すごく落ち着いた雰囲気で話しかけてきてくれた。
今思うと――先輩。小学2年の時から落ち着きすぎ。大人でしょ。
「――えっ?」
「周りを見てなくてぶつかっちゃったんだよ。ごめん。大丈夫?」
高速で頷く私。って、私がぶつかったはずなのに、なぜか謝られている。そのことをもちろん言いたかったが、私。言えるわけなく。いや、だって、男の子に抱きかかえられるとか――初ですから。
「大丈夫?顔赤いけど――?」
「――」
再度高速頷きを私がすると、男の子は私を立たせてくれた。
「もし何かあったら言って、俺2年の多度だから。って――君の名前もいい?」
いやいや、ほんと今思うと、多度先輩小学2年生の対応じゃないよ。って、そんなことを言われた私だが。この時は何が起こったかわからず。パニックの頭の中。そんな中に男の子からの名前――という言葉だけ聞こえてきて。
「――い、いえ――あっ、その――で。あっ。えっと、私――海きゃです――ごめんな――しゃい」
そこからの事ははっきりは覚えてないけど、とにかく私は逃走。即逃走。鼻が痛かったけど全力で逃走。からの遠足が終わってからの事。もうあの男の子の事しか考えられなかった乙女ですよ。
そして誰か調べ――なくてもすぐわかって。追っかけ。もちろん声なんてかけられなかったけど。でも見ているだけで――えへへ……。怖っ私。
と。とりあえず、そりゃもう小学生の時の出来事全部忘れるぐらいに。あっ、5年生の最後からしばらくショックで何もやる気が起こらなかったは覚えているなー。いや、先輩が卒業してね。その時のことは覚えてるかな。ちなみにショックからはすぐに抜けたんだけどね。
何故かって?先輩は中学に行っただけ。って理解したから。来年には私も――さらに、朝にちらっとだけど、先輩を登校中に見ることができることを知ったから。中学の制服着た先輩かっこよかったよー。って、私、このころからめっちゃ先輩追いかけてるよ。怖っ。
ちなみに小学校の時に先輩に話しかけようと、数百回はしたと思う。でも私がチャレンジしようとする時は、決まって先輩の周りは人。人。って、いつも人人だったからチャレンジすらできず。でも見ていた時間なら――って、やっぱり怖っ私。
★
とまあ小学校はそれくらいに――って、そうそう、それからのことを簡単に触れると、中学で追いつきました。先輩中学ではやばいくらい人に常に囲まれてました。同じ部活には入ることに成功したけど――全く近寄れず。気が付いたら先輩高校生に……中学短すぎるんだよ!って、小学校が複数くっついたことでクラスも増えたし。先輩は人集めちゃうしで私なんか眼中に――だよ。って、そこであきらめる私ではなかった。怖っ。
いや、部活の顧問の先生にそれとなーく。先輩。部活でも活躍していたからね。『多度先輩は高校でもしてるんですかね?』とか。とさりげなく聞いて。無事に先輩の進んだ高校情報ゲット。運よく私の家の近くの高校だったから、そりゃ私猛勉強ですよ。そして見事合格からのまたストーカー……怖っ。私。
とまあそんなこんなで、高校まで話すこともないのに追いかけてきてしまった私です。いや、改めて――私やばい子だわ。多分私は馬鹿だろう。いや――言い方を変えれば犯罪者かもしれない。
って、ここまで追いかけてきても、結局高校でもちゃんと先輩には声すらかけられなかったけど。何してるの私。
そりゃ先輩に彼女とかが居るなら――とっくに私諦めてましたよ?そりゃ関係をぶち壊すとか。そんな怖いことしませんよ。ストーカーですが……。
でもね。幸いなのか。今まで多度先輩は一度も告白に対してOKをしてないという情報がありましてね。だから私もしかして――って、ほぼ話したこともない奴が何を言っているんだ。だけど――でも私やばい奴だから。
ちなみに私も告白なんて全部お断りですよ。
◆
「……私何してるんだろうな。帰ろう」
いろいろ思い出して、自分のヤバさ。あと、さすがにもう追っかけは無理。と気が付いた私は式も終わってとっくに解散しているので、1人で帰ることに――って、踏切!タイミングが悪っ。いや、私の家と高校は徒歩圏内なんだけど。間に線路があってね。踏切に捕まると地味に長い――とか思っているガタゴト電車がやって来て目の前を通――。
「――海華!」
ガタンガタン。と、目の前で騒音――の中。今私誰かに呼ばれなかった?と、ふと振り返ると――なんですと!?
多度先輩が1人でこちらに向かってき――ふぇ!?
「――まだいた。急に見えなくな――じゃなくて。えっと、ちゃんと話すのは、小学校――の時以来か。えっと――海華だよな?」
「――――へっ?」
驚きで私は小さな声しか出せなかった。電車の走行音でかき消されていただろう。って何が起こっている!?
「あっ、ごめん。いきなり名前とか。でも――あの時名前しか聞かなかったからさ。苗字知らなくて――って、いや、ここで逃すと――もういや、本当は小学校――いや、中学で。って、俺何言って――その実は俺昔――いや、ちゃんと説明がでも話すと俺ヤバ――。あーえっと」
「……」
私の頭の中がパニックになる。何故か多度先輩もパニックだが。って、この状況何?慌てる多度先輩が目の前に――そんな光景を見ていると私の方は落ち着いてきた。こんな先輩の姿レアだからしっかり記録したい!って、怖いわ!私。
「――あっ、俺東京の○○大学行――じゃなくて!」
すると先輩から別れの。やばい。先輩が遠くに――いや、あれ?今私先輩の進学先ゲットしたよね?まだ諦める必要ない?ってか、先輩って人の名前覚えるの……えっ!?もしかして――いや、そんなことある?でも――いいの?そう思うよ?まさかの物語始まっちゃう?もう止まらないよ?
私の心――いや、声が初めて華やいだ。
『先輩。大学で待っていてください。まだストーカーします!
多度先輩の間抜けな声が出るまであと3秒。
私のストーカ―まだまだ続く。
(了)
その視線――気が付いていた。 くすのきさくら @yu24meteora
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます