第3話 ハッピーエンドしか読みたくない

 わが家にはとんでもない量の漫画本があります。

 地震が起きて本棚が倒れてきたら窒息するレベルで、息子の友達が来たときは「漫画喫茶やな」とつぶやいておりました。

 もちろん麦わら帽子の男の手が伸びる例のヤツも全巻並んでいます。

 しかしながら読んだことはありません。


 沢山人が出てくるのとか、細かい設定だとか、面倒な三角関係だとか、人生の機微だとか、緻密に張られた伏線だとか、一切合切面倒な御年頃になってしまったからです。仮に巻末まで読み切ったとしても、次の巻が出るまでの期間、現在の細かい設定や登場人物を覚えていられなくなりました。

 ストーリーを超える面倒な出来事が立て続けに起きる職場、流れ弾を避けながら終業時刻を終え、家に帰って家事をこなして、専門書を読み知識のブラッシュアップを図った後で、複雑な伏線を読み解く脳の体力が残されていません。


 そんな高齢者にやさしいハーレクイン。

 10ページも読めばオチがわかる、水だし麦茶のように薄く爽やかな読後感。


 それなのに自分で書くとどうしてハッピーエンドにならないのか。

 

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