パッチワーク・ライフ

錦魚葉椿

第1話 こころの戸棚

 今日も仕事は腹に据えかねることばかりだった。

 何人のおっさんに「ハゲろ」の呪いをかけたことだろう。呪い返しに遭って自分がはげるかもしれないのが心配だ。

 よく考えてみたら所詮、サラリーマンの小さな苛立ちに過ぎないもの。囚われる価値もないような些末な嫌がらせにすぎない。


 娘に尋ねてみた。

「ねえ、この腹立ちをどう自分の中で処理したらいいと思う?」

 彼女はやや無表情に答える。

「箱に詰めてこころの戸棚にしまうといいと思う。時々取り出して、小説のネタに使う」

 ふと気が付けばこころの戸棚には棚板が抜けそうなほどの感情の端切れが詰め込まれているじゃないですか。図案を考えながらいるところだけ切り取って残りを捨てることができます。ここは私のこころの産業廃棄物処理場。

 持続可能な社会を目指しています。

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