第53話 これから
西園寺との死闘の最中、ジュリアンと
「ジュリアン! 月見里! 無事だったんだな!」
「遅くなったな。状況は悪くないようだが、助太刀するぞ」
「ミミたちがあんなのにやられるとおもった? 余裕だったよ」
「はは! さすがだ。助かったぜ」
「とりあえず、えいっ!
月見里はよくわからんことを言いながら西園寺に向かって手をかざした。
「西園寺のやつ、すごいオーラだね。ちょっとデバフかけてみたけど少ししか弱らせることができないや」
「い、今のデバフだったのか。やるじゃねえか」
「デバフか。馬鹿め。お前らゴミが俺に影響力を与えられると思うなよ」
デバフを食らったであろう西園寺の纏うエネルギーにかすかな勢いの変化が見える。そこまで効いてるわけではないが、ないよりましだろう。おそらく、今が一番弱っている時だ。
「これで最後だ。西園寺! お前にありったけをぶつけてやるぜ」
「雑魚が何匹群れても雑魚。お前たちを全員殺して俺は異世界の王になる!」
そして、互いの拳が交差する。
勢いよく放った拳は、西園寺の顔面にクリーンヒットした。
反対にヤツの拳はおれの顔をかすっただけだった。
その場で膝から崩れ落ちる西園寺。
「あばばばば……な、なぜだ……」
「勝負あったな、西園寺」
「なぜだ。なぜお前はこれほどまでの力を……」
「ここで積み上げてきたものの違いだよ。お前は人を使って悪事を働いてるだけで、実質何もしてなかっただろ。能力も人真似だしな」
「ぐ、ぐぐう、俺は、俺は正真正銘最強の存在のはずなのに……」
「悪いが容赦しねえぜ。お前も今までそうだったんだからな。罪のない人間を何人も殺してよ」
「ふざけるな、俺をどうするつもりだ。助けろ。俺を殺すなんて、この世界の損失だぞ」
「イカれたか? それに命乞いするなら、助けてくださいだろ」
「た、助けて……くれ。死にたくないんだ……あああああ」
プライドをへし折られて精神的に弱った西園寺は、どこかちっぽけに見えた。
支えとなるものを失ったとき、これほどまでに人は弱くなるのだ。おれはいたたまれなくなり、拳をおろした。
「バーカ、お前なんか殺す価値もねえ」
「っえ?」
「お前をどうするかは、この世界の奴らが決めることだ。あとは国に判断を任せるぜ」
こうして、西園寺は城の兵士たちに捕まり、地下牢に幽閉された。精神が壊れ、能力を失った西園寺は廃人のようになっていた。
その後、城の奥の方に幽閉されていたターニャを救出した。そしておれたちは、国王に感謝され、城をあとにした。どうやら国王や兵士たちは西園寺の能力によって支配されていたらしい。
二週間後。
「涼介、いってらっしゃ〜い」
「おう、今日は早く帰るぜ」
おれは、結局ターニャといっしょに生活をしている。仕事は冒険者だ。今日も冒険者ギルドに行きクエストを受注して仲間と出発する。そんな毎日だ。
おれは冒険者ギルドで月見里と駄弁っていた。もうひとりのパーティメンバーを待ちながら。
「思ったんだけど、おれたちがこの世界に来た意味ってなんなんだろうな」
「それは……ミミたちの手でこの世界に平和を取り戻してくれってことなんじゃないのー?」
「そうなのかなあ。でも、じゃあ大魔王みたいなやつがいるわけか?」
「さー、ミミわかんなーい」
「お前たち! よく聞け」
「うわ、ビックリした! なんだよジュリアン、あわててどうした?」
「大魔王の情報を掴んだぞ。今夜、遠征に出発しよう!」
「なんだって!? 大魔王!?」
「そうだ。リョウスケ、お前の力が必要だ。いっしょに行ってくれるな!?」
「……まあ、行くけど」
おれの本当の冒険はまだ始まったばかりのようだ。
おわり
復讐は異世界で! 〜問題児ばかりのクラス転移。異世界で悪行を働くクラスメイトたちに、チートスキル【透明化】を駆使して制裁を加えます〜 猫宮うたい @nekomiya_utai
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます