初代プレイステーション時代のカックカクポリゴンゲームの世界に転生したけど俺だけヌルヌル動ける件〜NowLoading?なんですか、それ?
マコンデ大佐
第1話
プレイステーションは、西暦1,994年にソニーから発売された家庭用ゲーム機だ。それまでは2D表現しか出来なかった家庭用ゲームで、ポリゴンによる立体的なゲームが遊べる!と言うのが最大のウリだったが、俺はその頃から大のアニオタ。あんな牛乳パックで作ったようなキャラに興味はなく、もっぱら2Dゲームで遊んでいた。ときメモ最高。
それから約三十年。時代は進歩してポリゴンは下手をすれば現実と見紛うほどのクオリティーを手に入れた。
「ああ、こんな世界の中に入り込んで冒険できたらなぁ」
「プレステ・クラシックっていうの面白そうじゃない?」
「いまさら古いゲームなんかで遊べないよ。それより俺はプレステ5が欲しい。それはもう狂おしい程に!」
「昔のゲームも面白いのになぁ」
「金を貰ってもやりたくないね」
△▼△
そんな会話をした翌日。目が覚めると、そこは「プレステ」の世界だった。厳密にはプレステ・クラシックの世界という事らしく、目の前にはそこに収録されたゲームのメニューが並んでいる。
「ここにあるゲームを全てクリアしたら、元の世界へ戻してやろう」
どこからともなく聞こえる声に、俺は怒鳴り返す。
「クリアとか無いゲームもありますけど!?」
「……」
返事は戻らない。これは一体どういう仕打ちだ。レトロゲームを馬鹿にした俺にバチが当たったのか?しかし考えていても始まらない。自分の身体を眺めて見れば、どうも俺の身体は元のままだ。
「これ、行けるんじゃね?」
とりあえず終わりの見えないパズルゲーは頭から排除して、クリア可能なゲームから攻略してみよう。ここにあるタイトルを全て遊んだ訳ではないが、RPGなら時間を掛ければ問題ない。先ずは格闘ゲームからやってみるか。
昔の格ゲーなど、ガチャガチャやっていれば勝てるヌルゲーばかり。そんなものに実写(?)の俺が負ける道理がない。やってやんよ!
△▼△
「いてえ!いてててて!いてえって!」
「闘神伝」は地獄だった。角張ったポリゴンキャラのパンチが顔に当たると、まるで角材で殴打されたかのように痛い。そもそもあの造形のキャラクターが等身大で目前にあり、俺に襲いかかってくるという絵面は、恐怖以外の何物でもない。
ヌルヌル動ける点に優位性を見出したのは間違いで、連中は動きは粗いがスピードが遅いわけではない。さらに言えば動きが粗いという事は、攻撃の一発にしても動きに連続性が欠けており、いわば瞬間移動のようなパンチを打ってくる。目で見ていたら避けらない。
やたらと機敏な敵の角張った拳でボコボコに殴られた俺は血だらけになり、どうにかしがみついて投技だけで「闘神伝」をクリアした。酷い目にあった。
△▼△
俺は癒やしを求めていた。ブロックの集合体のような女キャラにボコれた俺は「R4 RIDGE RACER TYPE 4」の世界に移動する。
このレーシングゲームはプレステにしては映像のクオリティーが高く、特にオープニングムービーのオシャレさは最高だ。未だに大好きだ。そしてそこは当時ナムコの看板娘として製作されたCGの美少女「ナガセ・ケイ」が登場する。
彼女を乗せてコースを疾走したい。これが戦いに荒んだ自分の心を癒やす唯一の手段だと信じた俺は「R4」の世界に入っていった。
「ケイちゃん。俺と
だかしかし、ムービーはムービーだった。俺は懐かしのムービーを久しぶりに眺めただけで、彼女は目の前には現れなかった。
「ガッデム!夢も希望もない!」
しかし絶望した俺に希望が閃いた。
「ジルだ。俺にはまだジルがいる。アヤ・ブレアもいいな!」
「闘神伝」で脳をやられたのか、それともケイに会えなかった精神的ダメージか、俺は少しでもマシな女性キャラに会いたくて仕方なかった。こうなったら多少のローポリは我慢しよう。昔は全て脳内で補完していたのだ。
「オールドゲーマーを舐めるなよ!待ってろジル。こちとら無印バイオなんざナイフだけでクリアしてんだ!」
勢い込んだ俺は「バイオハザード」の世界の扉を開く。
Now Loading……
「は?」
Now Loading……
「この間はまさか……シーク音もしない」
Now Loading……
「おい嘘だろう。『キューン』って言えよ『キューン』って!」
Now Loading……
「くそったれ……」
俺は電源を落とした。
初代プレイステーション時代のカックカクポリゴンゲームの世界に転生したけど俺だけヌルヌル動ける件〜NowLoading?なんですか、それ? マコンデ大佐 @Nichol
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