12 華

 猫蜜柑はリレイヤーのかわいい仲間!

「え、だから、そうじゃなくって、見出しを換えるんだよ。見出し! だからぁ、もちろん記事も差し換えるんだよ。わかんないかなぁ。ホットニュースなんだよ。え、なにっ、あんた、猫蜜柑が大好きなんだって? そりゃぁ、ま、あたしも好きだけどね。それは次回の記事にまわしゃいいだろう。あん、そうそう。本当に理解してんの? どうも頼りないなぁ。うん。じゃ、送るからね。ちゃんと載せるんだよ。いいね。ああ、はいはい、了解、了解……。じゃあな」

 ガチャン

「フン、いくら辺境の地だからって、特ダネは特ダネだろうに……。編集の馬鹿野郎!」


 海人草座第五惑星リレイヤーに咲く石の華!

 色気狂い空の星として銀河系既知領域内で知る人ぞ知るリレイヤー(海人草座δ星第五惑星)に、現地時間十三月三十五日(地球時間一月四日)石の華が咲いた。

(中略)ポリマーローズと呼ばれるリレイヤー天然の鉱物性植物は、これまで発掘された化石などから、この惑星の環境および生態系の謎を解く鍵と思われてきたが、その謎が著名な鉱物および惑星物理学者のアキコ・レミントン博士により、ある程度まで解明された。同博士は慎重を期し言明を避けているが、本誌記者の取材に『大まかなことしか答えられませんが』と断わりを入れた後、以下のようなコメントをして下さった。

『〈つぼ〉のようなものだと考えていただくと、わかりやすいかもしれません。もちろん、つぼとはリレイヤーに数万本も存在するポリマーローズのことでもあります。(中略)リレイヤーの生態系に必要不可欠なある種の有機物質やミネラル、生合成に重要な酵素自身の合成を促す別種の酵素の成長促進物質が、その根元から――おそらく大地そのものに蓄えられていたのでしょうね――分泌されます。さらに新しい、もしくは過去に生を謳歌したことのある生命の種子がポリマーローズから発散される誘因性物質=ポルヴィヴァージョL(仮名)によってFLBの中から解き放たれるのです』

 頬を上気させてそう語るアキコ博士の傍らには、優しい顔つきで同博士を見守るご主人のクリフォード・レミントン博士(色素化学者)が控えておられた。

(中略)『ええ、あのリレイヤーの大地がまるでひっくりかえったような一昼夜は、生きた心地がしませんでしたね』

 本誌記者も体験したその〈大地がひっくりかえったような一昼夜〉は、たしかにそれ以外の形容を拒む出来事だったかもしれない。

(中略)とにかく、九割がた海に囲まれたリレイヤーの大地は、いま長い冬を終え、大きな春を迎えようとしている。何万年かぶりに咲いた石の華、ポリマーローズによって……。

 コスモ・アタヴァクロン誌

  特派員 ジェローム・J・ブルース                                    (了)

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色気狂い り(PN) @ritsune_hayasuki

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