萩市立地球防衛軍☆KAC2023その④【深夜の散歩で起きた出来事編】

暗黒星雲

夜の翼

 私の意識は自由を欲しているのだろうか。


 深夜、決まって肉体を抜け出してしまう。

 これは幽体離脱なのか。それとも夢。


 こんな簡単に抜け出せるとは思ってもみなかった。


 そして不思議なのは、鏡もないのに自分の姿を確認出来た。今の私は長身で胸元が豊かで、女性から見ても相当な美形であろう。


 日頃の、背の低いちんちくりんな私からは想像もできない美しい姿に惚れてしまいそうだ。


 更に、私の背には四枚の羽根がゆらゆらと羽ばたいていた。


 昆虫の羽根のような、透明で淡く金色に輝く羽根。薄い膜のようなそれは、金粉のような細かい光の粒を周囲に撒き散らしている。


 その、四枚の羽根は私を大空へと誘う。


 満月の夜空。

 私は全裸だが、寒さなど感じない。


 そこには尽きる事のない解放感だけがある。

 

 そして私は自分が何者であるかを思い出す。

 そして私は自分が何者であったかを忘れる。


 今は月の光に抱かれ、まどろみの風に撫でられ、夜の闇の中を自由自在に舞う。


 ふと、甘い香りに気づく。

 それはとある洋館の庭から漂っていた。


 私はその庭へと降りる。

 芝生が敷きつめられ、その周囲を色とりどりの花が囲んでいた。


 私を出迎えてくれたのは私だった。

 黄金の髪を風にたなびかせた私も全裸だった。


 庭の中央にベッドがあった。私は私の手を取りそこに二人で倒れ込む。

 私は積極的に私を求めて来た。

 性の快楽が体中を駆け巡る。


 私は私と熱い口づけをかわす。それは舌を絡め合う濃厚なキス。私はその甘美な感覚に取り込まれていく。


 性とは肉体の快楽である。

 私は私と抱き合いながら、私の体は自分が何者であったのかを思い出した。


 抱き合っている私と私の体が混じり合い、私は一人の私になった。

 そして朝を迎えた。


「ララ様。朝食の準備ができております」


 世話係のソフィアだ。私はベッドから起き上がり、そして姿見を眺める。いつもの私。子供体型の私。防衛軍隊長の私がそこにいた。

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