第15話 改稿

「酷い…酷いわ。絶対嫌よ!王様も王妃様も私を聖女じゃないと疑って虐めるのね。酷いわ!私は聖女なのよ? なんで、聖女の力を気軽に人に見せないといけないのよ~。うっ…うわ~ん。王子さま~助けてぇ~。皆で私を虐めるの~。うわ~んガラルド王子助けてぇ~(チッ!しつこい。あたしは聖女の力なんて使えないんだよ!)」


 と、国王や他の貴族達の前で泣き叫んびルルベルは聖女の力を使うこと無く、ただただ泣くだけでなにもしなかった。


 それに呆れた王や王妃らは、ルルベルの養い親である男爵にルルベルを宥める様に告げた。

 それに従うルルベルの義父は、ルルベルを宥めるのだが……。


「る、ルルベル国王様のご命令なのだぞ。お前!泣いている暇があるなら、早く聖女の力をここにいる皆に見せろ!(お前のせいで、王から私も何らかな罰が下されるかもしれないのだ! 早く力を振るえ!聖女なんだろ。自分は聖女だと言って、私に近づいて来た癖に。この期に及んで、何の力も使わない等あり得ん!くそ騙された)」

「お、お義父様まで、私を利用するの? なんで? お義父様ひ~ど~い~。なんで、私を守ってくれないのよぉ~うわ~ん~ひ~ど~いぃ~」


 ルルベルは、宥める義理の父を酷いと言い更にルルベルは更に泣いた。

 だが、ルルベルは記憶力が悪いのか勘違いをしている。実際は、男爵はやむを得ずこのルルベルを引き取っただけである。ある日突然ルルベルが屋敷に乗り込んで来ると、「私は聖女なの」と宣った。だからこの家の養女にしろと散々喚き、夫妻は負けやむを得ず男爵家の養女にしたのだ。

 だが男爵の妻は納得出来ないのか、ルルベルを毛嫌いしている。けして、男爵夫妻はルルベルを両手を広げ快くルルベルを男爵家に迎え入れた訳ではないのだ。

 

 一方の国王や宰相他の貴族達は、ルルベルが泣く光景を黙って眺めていたが、次第に貴族達の口から男爵を責める声が聞こえだした。そして、次第に男爵とルルベルを避難する声が謁見の間に拡がる。そのざわめきを聞く王はこめかみに手を当て、溜め息を吐いた。

「…はぁ………」


 それを隣に立つ宰相が王の溜め息に気が付き、この場に居る貴族や家臣達に聞こえる様に声を掛けた。


「ええい騒がしいぞ!皆、陛下御前である。口を慎め!」と部屋中に声を響かせた。


 それを聞いた者達が一斉に国王を見る。そして、貴族達は口を閉じて姿勢を正した。


(はぁ、やっと場が静かになったな。

 ただ、未だに声を上げて泣くのはあやつだけだがな。仕方ない……)


 国王は、宰相に目をやるとその仕草に気が付いた宰相は国王に近づくと王は宰相に、こそこそと耳打ちし始めた。


「(宰相よ、男爵に娘には後日沙汰を出すと伝えよ)」

「(は、その様に伝えますが、宜しいのですか?)」

「(なにが?)」

「(いえ、わざわざこの場を儲けたのに、ただ、あのように泣くだけで何の力を見せず帰すとは。他の貴族も納得しませんぞ?)」

「…はぁ…よいよ、もう私は疲れた。宰相その様にしろ」

「…畏まりました」


 国王から話を聞いた宰相は、泣くルルベルをちらりと見ると、忌々しげに眉間にシワを寄せて義父である男爵へ国王の伝達をこう告げた。


「ナヤーム男爵、そなたの娘の処分だがな」

「は、はい……」

「後程陛下より、その娘の沙汰を下し申し渡すとの事だ。今日は娘を連れて下がれ」

「は、はい!それでは、し、失礼を。ほら、ルルベル泣いてないで帰るぞ!」

「ひどい!私は何もしてないわ」

「っ……煩い黙れ!ほら行くぞ」


 ナヤーム男爵は、泣くルルベルの腕を強引っ張り上げて立たせると、そのまま腕を引き謁見の間から退室していった。

 謁見の間に居た貴族達は、泣くだけでなにもしない娘に呆れた顔を向け謁見の間から出ていくのを黙って見送るのだった。


 そうしてルルベルは、一旦男爵の屋敷に帰され部屋に軟禁された。

 後日ルルベルには処分が下った。


 国王は、ルルベルを強制的に神殿に入れる様命を下した。

 ルルベルは一年の間、聖女の力を習得する様言い渡し。

 さらにガラルドには、半年間は二人で会う事を禁じた。


 早速ルルベルは神殿に入れられたが、神殿にいる司祭達が頭を抱えたのだ。

 ルルベルには、聖女の力を習得させる修行と神殿の仕事を言い付けたのだが、ルルベルは一向に修行も仕事も嫌だと言い張り、しまいには泣きながら与えた部屋に閉じ籠るだけでなにもしないで逃げ続けた。


 そして、神殿の司祭達は誰一人ルルベルの面倒を見ることを放棄した。要はルルベルを見限った、司祭達はルルベルをこう判断した″あの娘は使えない″と。


 司祭は王宮に早速ルルベルの状況を報告し、ルルベルを移動させる事を願い出たのだ。

 その報告を聞いた神殿長は、ルルベルの一連の行動を聞き判断した。


「フフフこれで厄介者の処分が出来ますね。直ぐに王宮に連絡をしないと。早速に、あの娘にはここから出て行って貰いましょう。はぁ~これで私は元の仕事が出来ますね。それにしても、シェル様は…もうここには来られないのでしょうか? 寂しく成りますね」と呟き、ルルベルの事を陛下に報告する為の沙汰を出すのだった。


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王子から言い渡された婚約破棄! (はぁ?聖女に転生したのに悪役令嬢ってなによ!それな良いわ覚えてなさい!いつかギャフンと言わせてやる) いくみ @kimica

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