第14話
プラローズ家次男アンソニーが、シェルの屋敷に出向いている頃、王城ではちょっとした騒ぎに為っていた。
「痛った!なにするのよ!」
騎士に連行され牢屋に入れらていたルルベルは、目の前に国王が居るにも拘わらず騎士に乱暴な扱いをしたと怒鳴った。
「ウォホン」
そこへ咳払い声がルルベルの耳に届いた。
「えっ!なに?誰か居る?」
ルルベル騎士に押さえられ、身動一つ出来ず、自由に体を動かせないので唯一動いた頭を動かし周りを確認した。(はぁ!なんでこんな場所に居るのよ!)
気が付けば、ルルベルは国王や貴族の前に連れ出されていた。
ルルベルが連れ出された場所は、謁見の間だ。
「良い、下がれ」
「ですが…」
「良い」
「はっ」
国王の一言で兵士な腕が離れると、ルルベルの拘束は解かれた。
そして、国王はルルベルにこう話し掛けた。
「さて…ルルベル・ナヤ―ム男爵令嬢。此度は、そなたの力を聖女の力を皆に見せて貰う為にここへ来て貰った。聖女ルルベルよ、そなたの聖女の力をここで示して見せよ。そして、そなたが聖女と云うのならば私達を納得させてみろ」
「はぁ………嫌よ!なんで私がそんな事をしないとならないのよ!それにあたしは王子様の婚約者なのよ? それを分かってて、あたしの力を使えなんて酷い。皆で私を虐めるのねぇ~!ひどいぃ……うぅぅ……うわ~ん」
ルルベルは力を使えと言う命令を突っぱねた。それも泣き叫びながら。
だが、ルルベルは泣き真似しながら足らない頭で考える。
あの日、王子に連れて行って貰ったパーティーで″あの″悪役令嬢を断罪したのに!あの悪役令嬢を、絶対あの場で恥をかかせてやろうと決めてたのに、何であたしが牢屋に入れらないとならないのよ。
それに、無理やり牢屋から出されたと思えば何であたしが王様の前で、聖女の力を見せろなんて言われないといけないのよ!
だけどこれは不味いわ。
頭の悪いあたしでも分かる。
これは…不味い。
なんとか泣いて誤魔化して、この場を遣り過ごさないと……あたし聖女の力なんて使えないし。
あー腹が立つんだけど!
そもそも、なんでこんな事をさせられないとならないのよ!こんな事はあいつ(神様)から聞いてないし!
それに、いくら王様の前だからってあたしがここにいるオヤジ達の前で土下座とか信じられない。
無理、マジムカつく。
本物の聖女の力なんて知らんわ。
それに…ここってゲームの世界じゃん?
簡単に祈る振りすれば力を使えると思ってたし。……けど、使えなかった。
なんで?
あたしがヒロインなのになんでこんな仕打ちを受けないとならないのよ!
もーマジで、ありえないんだけど。
聖女の力なんてあいつ(神様)から説明されてないし。
それにあたしを引き取ったあの男爵…あのオヤジあんまり好い人じゃないし。
と泣きながら脳内で愚痴って思い付いたのは、なんとかして男爵家に戻ると言う考えに至るのだった。
「うわ~ん、おうじ~ざまぁ~だ~ず~け~でぇ~だ~ず~けでぇーー。(よし、ここは泣いて誤魔化して逃げよう。その内王子にも会えるかも知れないしね。それにあの悪役令嬢は断罪されたんだし、ある意味あたしが勝ちなんじゃね?)」
一方の国王達の方は、ルルベルの考えを知ることはない。
ルルベルには、聖女の力をこの謁見の間に居る他の貴族達の前で披露する様にと迫った。
のだが…ルルベルはそれを聞くと更に泣き嫌だと言い続ける。
ルルベルは、泣き叫んだ挙げ句にガラルドに助けを求めて泣きじゃくった。
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