KAC20237 KAC、1時間以内に投稿するのを目標にした男のいいわけ

無月兄

第1話

 今年もKACの季節がやってきた。


 一応知らない方のためにKACの説明をしておくと、一ヶ月の間に、カクヨム公式が順次出してくるお題に基づいた作品を投稿するというキャンペーンだ。 ただし、一ヶ月の間にお題が10個も出た場合、一つのお題にかけられる時間が2〜3日しかなく、全てこなすためにはとにかく高速で作品を書き続けなければならないというとんでもない企画である。 当然、KAC参加作品を読もうとすると、それだって大変だ。フォロワーさんの作品だけでも、一日の間に10以上新作が公開される。いくら読んでもきりがない。


 そのため、狂気の祭典だの、日常生活ブレイカーだの言う者も多かった。


 今年のお題は全部で七つ。

 俺としては、書くのも読むのも全力で取り組みたい。だが、さっきも言った通りそれはあまりにも大変だ。なにしろ、時間があまりにもなさすぎる。


 この難関を乗り切るため、俺はひとつの決意をした。それは、書く高速ですませること。

 書くのを素早く終わらせることができれば、その分残りの時間を読むに当てることができる。目標は、全部のお題が発表されてから1時間以内に書き終わり、公開すること。


 もちろん、それが簡単でないのはよくわかってる。だが書くも読むもめいっぱい楽しむにはそれしかない。


 その一心で、とにかく素早く書くことに全力を尽くした。


 事前にいくつか話のストックを用意して、お題にあうように改版した。

 それが無理なら、お題が発表されたと同時に、一気に頭をフル回転させ、高速で書き上げた。

 すると、人間やればできるもの。現在6つ全てのお題が発表されたが、なんと全て発表から1時間以内に書き上げることができていた。


 しかも、このまるでゲームの縛りプレイをやってるみたいな高難易度ミッション、これはこれでなかなか面白い。


 残るお題はあとひとつ。


 この日、俺は夜勤で、昼間寝るのが日課となっていた。普通なら、10時〜16時の間は寝ている。

 しかし、KAC期間中はそうではない。なにしろ、お題発表はお昼12時。発表と同時に書き始められるようにしなければ。


 いつも通り10時に布団に入りはしたが、12時になる少し前に目覚ましをセットし、準備は万端。

 最後のお題よ、待ってろよ。


 そう思ったのだが……







「寝坊したーっ!」


 俺は、物の見事に寝坊してしまった。

 ち、違うんだ。目覚ましはちゃんとかけたんだ。ちゃんと目は覚ましたんだ。

 だから、ちゃんと起きるための努力はしたんだ。一瞬ではあるが起きはしたから、完全にだめだったってわけじゃないんだ。


 ただ、ただな、つい眠すぎて、禁断の呪文「あと5分だけ〜」が発動してしまったんだ!

 それさえなければちゃんと起きていられたんだよ!


 なんて自分にいいわけしても仕方ない。慌てて時計を見ると現在12時10分。10分しか遅刻していない。今から頑張ればまだ待ち合うかも。

 問題は、お題だ。急いで確認しなくては。

 最後のお題、いったい何なのか。ドキドキしながら確認したそれは、これだ。





『いいわけ』





 よし。今回の話をエッセイにして、寝坊のいいわけをしよう。これで1時間以内の投稿はクリアだ。


 ※早く書くというのは努力目標くらいの認識、実際は1作だけ1時間をオーバーしたなど、一部話を盛ってますが、ほぼ筆者の実話です。

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KAC20237 KAC、1時間以内に投稿するのを目標にした男のいいわけ 無月兄 @tukuyomimutuki

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