ハト
時代は大昔。私は都市で商人として活動していた。
しかし、それは表向きの姿に過ぎない。私には特殊な能力を持っているのだ。
それを活かして、国の治安維持に大きく貢献していることを知る者はいない。
「うん?あのハトはもしや……」
ある都市の市場に向かう際、一羽のハトが飛び立つのを目撃した。
軍の陣地がある方角から飛んできたこと、足に何かが括り付けられているのが気になった。確認しておこうか。
「さぁ、こちらに来るんだ。逆らえないぞ」
私はハトの心を動かすことが出来るのだ。軍で利用されているハトは訓練を施されているだろうが関係ない。特殊能力には抗うことは不可能だ。
「さあ、良い子だ。じゃあ、足に付いているものを見せてくれよ。勝手に飛び立たないようにね」
ハトを大人しくさせつつ、中身を確認した。手紙だった。早めに内容を調べなければ。
『〇〇地区の△△将軍へ。反乱の準備ができました。これを読み終え次第、武装蜂起をしてください。これであなたは皇帝として君臨することができるでしょう』
なるほど。では、別の手紙を括りつけてと……。
「よし、いいか。都にいる皇帝陛下のもとへ行くんだぞ。2枚の手紙は少し重いかもしれないが、頑張るんだよ」
餌を与えて、行き先を変えるように命令した。
2本足の片方には反乱の証拠、もう一方には早急の対応を求める手紙を携えて、無事に飛び立った。方角も間違っていないから、能力は正常に発動しているようだ。
それから間もなく、反乱は未然に防がれた。
陛下からの手紙が届き、感謝の言葉がつづられていた。
「言葉じゃなくて、免税の特権がもらえると私は嬉しいのだけれど。まあ、いいさ。平和じゃないと商売なんてやれっこないんだ。平和に感謝しながら、陛下に税を納めておこう。さてと、次に向かう都市はどこだったかな」
動物と人 荒川馳夫 @arakawa_haseo111
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