ホンモノの医師 🪶 

上月くるを

ホンモノの医師 🪶





 人間の真価は肩書きや社会的地位、資産とか服装とかの飾りでは決められないね。

 オバサン、いくつ? 真顔で訊ねられそうなことを真顔で呟いているヨウコさん。


 なんですかねえ、このごろ、やたらに涙もろくなって、同時に年甲斐もない義侠心を尖らせる一方なのは、清濁併せ吞まなくていいフリーランスになったせいかしら。


 この歳になりますと当然のことに、行き会う人たちの大方が年下ですから(笑)、少しお話しただけで、いえ、一面識だけで(ネットでも)人間性が透けて見えます。


 判断基準はただひとつ、生真面目な善人かどうかだけ(むろん、だれにも善悪両面があることは承知のうえ)それ以外は容姿とか学歴とか役職とかいっさい関係なし。


 いろいろな立場の人たちの表も裏も見放題見させられて来ましたので、いざというとき頼りになるか、保身のために卑劣な行動をとらないか、それがもっとも重要で。




      ⚖️




 滑舌を音量でカバーしようとてか、やたら大声ばかりの刑事ドラマは苦手なので、アフターフォローの胃腸薬として録画してあるのが再放送の『イチケイのカラス』。


 中卒裁判官・入間みちお(竹野内豊さん)の「職権を発動します」が決め台詞で、毎回の人情味あふれる判決にスカッと胸が晴れる現代版『遠山の金さん』の仕掛け。


 黒木華さん演じる同僚や大型犬🐕みちこも登場し、すべてが渋好みのヨウコさん対応なのですが、シリーズエンディング間近、偽医者の回はとりわけ印象的でした。


 医師免許がないまま富山の僻村の父親の診療所を手伝っていたウデのいい偽医師(笑)の人情譚なのですが、架空の物語といえど胸をゆすぶるものがあり過ぎ……。


 失踪後、都会のホームレス仲間に慕われて暮らしていたグレーのジャージの男と、毎日テレビで見せられる高級スーツのGやらKらの脂顔、どっちが本当のワルなの?




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ホンモノの医師 🪶  上月くるを @kurutan

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ