思春期少女の心は不安定に揺れる、まるで観覧車のように……。

学校に行かず、鞄にウンコを入れて外出していた女子高生の夕紗。彼女は心に若者特有の悩みや怒り、恐れや閉塞感を持ち合わせていた。そんな時、以前に入院していた病院で診療を受け、世話になっていた看護士の牧子さんと再開する。牧子さんは夕紗を心配し騒ぎ、親切心から彼女の手を掴み観覧車に誘う。観覧車という名の閉鎖空間に乗った二人は互いの近況を語り合うのだが……夕紗は思わぬ行動に出てしまい……。

本人は良かれと思って行動しても、その行為が結果的に相手を傷付けたり怒らせてしまう。そんなコミュニケーションのエラーや、捉え方の違いが誰しもあるのではないだろうか。同時に後から考えたら悪いと分かることでも、衝動的に動いたり発言してしまったことがあるのではないだろうか。私もそういった経験があるので色々と考えさせられました。そして普段はないのですが、昔の体験を思い出して泣きそうになりました。

“人は他者を理解しようとすることは出来ても、相手を完全に理解するのは無理なんだ。でも人とは接していかなくてはいけない”

何となくそんな意図を感じました。ただラストは読後感が良く爽やかでした。

とても素晴らしい文学作品でした。作者様の他作品が好きな方なら、恐らく大切な作品になるのではないでしょうか。個人的には過去作品である、通学路を思いだし読みました。





その他のおすすめレビュー

持野キナ子さんの他のおすすめレビュー464