番外編3 フライドポテト
「ユウジ。聞きたい事があるんだけど良いか?」
「あ?改まってなんだよ」
「今、ユウジは何歳だ?」
「…多分、今年で50歳だな。それがどうかしたか?」
俺は疑問に思っていた事がある。この世界に来てもう五年が経っている。
それなのに、ユウジの姿は出会った頃と変わらないのだ。勿論、俺も来た時と変わらないように思える。
「そうか?俺は20歳の時にこの世界に来たけど、順調に老けてきたと思うけどな。シンの気のせいじゃねぇのか?お前童顔だし」
「気のせいなのか…?いや、俺の料理って色々おかしいだろ?もしかして、食べ続けたら年を取らなくなるんじゃないかなーとか思ってさ」
「強くなるだけじゃなく、不老にまでなるってどんなスキルだよ。まあ、俺としてはそっちの方がララと一緒に過ごせる期間が長くなるから良いけどな」
「あ、そうすか」
気のせいなのか…?この時はそう思っていたが、後に俺の料理を食べ続けると不老になる事が判明することになる――
「今日はララノアさんは一緒じゃないのか?」
「なんか一回、村に帰るとか言ってたな。だから今日は飲むぞ!」
「いっつも飲んでるじゃねーか。なんか作るか?」
「フライドポテトが食いたい」
ユウジはいつも俺の所に来ると、日本で食べれるような料理ばかりを注文してくる。しまいには、「冷凍の枝豆を食わせろ」とか言ってくる始末…。
確かに俺にしか冷凍の枝豆は出せないけどさ。料理人に料理をさせないとか、楽ではあるんだけどなんだか複雑な気分だ。
例えで言うと甥に手料理を振舞った時に、「これ美味しい!」って言われた料理がデザートに用意した『フルーチェ』だったりした時の気分だわ。
「チーズソースで頼むわ」
「はいよ」
ユウジにビールを注ぎながらフライドポテトの準備をする。
細切りにしたじゃがいもを、片栗粉・小麦粉・塩コショウを入れたビニール袋にぶち込む。そして後はじゃがいもの表面に粉が付くまでシェイクするのみ。
袋で混ぜる事で、余計な洗い物を出さないのがポイントだ。
後はポテトを揚げるだけ。
次はチーズソースを作っていく。
フライパンにバターを溶かし、小麦粉を入れて混ぜる。この時は小麦粉がダマにならないように気を付けてくれ。
その後に牛乳を入れて、最後にチーズを入れてよく混ぜればソースの完成だ!!
「やっぱフライドポテトにはチーズソースだよな」
「俺はケチャップ派だけどな」
このチーズソースにパスタを和えても美味いんだよな。なんだか食いたくなってきたな…。
「そういや、泣き虫ロランはどうしてる?」
「ロランはリーシアたちと一緒に訓練してるぞ。確かパンゲア大陸の大森林でサバイバル訓練をするとか言ってたな」
つい先日に、最終試験としてパンゲア大陸に旅立っていったロラン達。俺としては十分にロランは強くなったと思うし、そこまでする必要はあるのか?とか思うんだけどな。
「あいつらもこの島にずっと居るのも飽きるんだろ。訓練という名の旅行だろ」
「確かにそれはあるかもな」
◇
訓練という名の旅行中のロラン達は、大変な事になっていた。
パンゲア大陸の大森林からエリオに乗って帰る途中に、海に浮かぶ孤島を見つけたロラン達は、興味本位で孤島に降り立った。
しかし、それは島ではなくアスピドケロンという魔物であった。その姿はウミガメのようだが、あまりにも巨大だ。その大きさに加えて甲羅がコケで覆われるため、島と間違われることが少なくない。
甲羅の上に生えているコケや木の実は、アスピドケロンの良質な魔力で育っている。つまり、それを目当てに食べにくる魔物が多くいるのだ。
争いを好まない温厚な性格のアスピドケロンではあるが、島に居る魔物達は別である。侵入者を排除するべく動くのは当然の事だろう。
良質な魔力で育った食材を食べているからなのか、魔物達の体表は黒色に染まっている。そんな魔物達が一斉にロラン達に襲い掛かって来たのだ。
結局、ノワルが暴れ回ったお陰で大した被害は受けなかったのだが、ノワルを恐れた魔物達は一斉に島から逃げ出してしまう。
向かってる方向はゴンドワナ大陸だ。この事に焦ったロランはエリオに乗ってゴンドワナ大陸に向かい、魔物達を一掃するのであった。
自分達を助けてくれたロランの事を人々は『勇者ロラン』として語り継いでいったという。後ろめたさからか、ロランはそれ以降ゴンドワナ大陸に足を踏み入れる事はなかった――。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
どうも。ゆりぞうです。
番外編は以上となります。
続きまして、この作品の続編となります。
異世界古民家レストラン『シン』
↓
異世界でも料理人してます〜夢を叶えるまでは絶対に諦めない。目指せ夢の古民家レストラン!〜 ゆりぞう @yurizou
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