勇者の絵本

「パパ!勇者のお絵本読んで!」

「お前はあの本が好きだな。ほら、もう夜が遅いからベットに入りながら読んであげる」



 ◇


 昔々の話です。


 まだ、世界には大陸が一つしか存在しないと言われていた時の話。


 大陸に住む、人や亜人たちは争う事もせずに、仲良く平和に暮らしていました。


 そんな時、海の向こうから黒い悪魔たちがやってきたのです。


 黒い悪魔たちは人々を襲い、そして街を焼き払ってしまいました。


 人々は亜人たちと協力して黒い悪魔たちをやっつける事に成功しました。


 しかし、海の向こうからはどんどん黒い悪魔たちがやってきてしまいます。


 倒しても倒しても、黒い悪魔たちはどんどん海の向こうからやってきます。


 人や亜人がどんどん傷つき、倒れていってしまいました。


「もう駄目だ」皆がそう思った時です。


 空から巨大な黒いドラゴンに乗った勇者が現れました。


 人や亜人が協力してやっつけていた黒い悪魔を、勇者は剣の一振りでやっつけていったのです。


 その勇者の強さを見た黒い悪魔たちは、海の向こうに逃げ帰っていきます。


 こうして、大陸に住む皆は助かりました――。



 ◇


「ねぇねぇ。この勇者様の名前はなんて言うの?」

「ん?言ってなかったか?だよ。ロラン様のお陰で、パパたちはこの大陸に住めているんだよ」


「ろらん様?いいなぁ、私も会ってみたいな!」

「ははっ。パパが小さい頃からこの絵本はあるからね。流石に勇者様はもう生きていないと思うよ?」

「わたしも大きくなったら、ろらん様みたいな勇者になりたい!」

「うーん…パパとしてはキャロルに危ない事をしてほしくないんだけどな――」


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