叶わぬ恋
校庭には風がそよいでいた。亡霊サー・ウィリアム・イースターは、ただじっと目の前の草花を見つめていた。
「当時の感覚は、私にはわからない」と私は言った。
「ああ君に一つ言い忘れていたよ。アーサーは16歳で死んだ。私はその死をゴーストとして見届けた。泣き叫ぶエリザベスのそばに私はずっといた。彼女に触れようともした。しかし無残にも、私の手は彼女の肉体に触れることはできなかったのだ。ある日、エリザベスはもう私に出てこないでといった。私は仕方なしにここ学園へと戻ってきた」
ウィルは息をふっと吐いてこう言った。
「君は私に尋ねたね?叶わぬ恋をどう思うか、と。私に言えることはただ一つ。君は、素敵な恋をしたんだよ」
真っ青な夜空には白い雲がポツリと浮かんでいた。中庭の木々はその夏の光を反射し、青々と茂っている。そして、心地よい夏風が私の背中をポンと押すように通り過ぎて行った。
亡き宮廷魔法使いの純愛物語 夏目海 @alicenatsuho
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