精霊の森 "魔王国横断"編(12 / 12)
「はぁ……失敗した……」
「だから言ったじゃろうて。ひとつの面倒ごとを起こせばより大きな面倒ごとになると」
シバの背中の上、俺はイオリテに詰められていた。
炭鉱群へと戻り、ジャンヌ、イオリテ、メイスを回収してようやく再び精霊の森を目指している道中だ。
ジャンヌたちの方の炭鉱群の敵殲滅が上手くいったことを聞き、その後俺の中央都市での件を話したところ……
イオリテに『それみたことか』と言われてしまったわけである。
「人を救うというのは難しかろうて。人は自分の都合に合わせて勝手に期待する生き物じゃ。お主が思っている以上に、切羽詰まった人間というものは救いを差し伸べた相手に身体的にも精神的にも大きく寄りかかってくる」
「……実感したよ。俺の見通しが甘かった」
まさかあそこまで人々に不安を与えてしまうとは思っていなかった。
ポッと出の冒険者に強く縋ってしまうほど、彼らがこの第一魔王国で味わった絶望は大きいということなのだろう。
「そういえばエリムといったあの女の冒険者はどうしたのじゃ? 帰ってきた時姿が見えんかったが」
「中央都市で、ロジャといっしょに帰りを待ってもらってる。解放された人たちの取りまとめも頼んでるんだ。万が一の事態が起こって、俺たちが駆けつける前に魔王軍が攻め込んできた時は逃げてもらう必要があるだろうし」
「……それ大丈夫か? あの冒険者にできるのか?」
「できると信じてはいる。まあ最悪のケースとして避難の必要があるかもって話なだけだ。もしそうなった場合、エリムにはマヌゥの能力で作った剣を持ってもらっているから、大体の居場所は掴める」
「ふむ……まあ幸い致命的なことはまだ何も起こってはおらぬ。それが起こる前に何としてでも精霊の森の件は片付ける必要があるな」
「ああ、急ごう」
「そうしたいとこやなぁ。
俺の言葉に隣で頷いたのはメイス。
不服げに、
「次来る時にはもっと手応えのある敵がおるとええんやけどねぇ。ところでテツトのお兄さん、モグラとかいう魔族はどうやったん? 強かった?」
「ああ、結構強かったよ。でもまあ苦戦したかといえば……」
「まあマヌゥさんと融合中のお兄さんは苦戦せぇへんか」
確かに苦戦はしなかった。
ただしかし、ずいぶんと時間がかかってしまったことは確かだ。
それはモグラの地面を利用した固い防御力を突破するのが大変だったという要因がひとつと、そしてもうひとつ……
俺は背中の黄金の剣──"コガネ"に触れる。
……あの戦闘中、コガネは俺に反抗するように何度も魔力の制御を乱してきた。いったいどういうことだろう?
心の内、カジへと問いかけてみる。
『さあ、知らんな。ワシは性質柄あらゆる剣を見てきたが、意思を持って所有者に反抗する剣など聞いたことはない』
カジにも分からないとすれば……
お手上げだな?
とはいえ"仲良くなりたい"と願い、そうして"コガネ"と名をつけたこの剣を諦める気はさらさらない。
……打ち解けるにはまだ時間が必要と、そういうことなんだろう。もう少しゆっくりと時間をかけて対話できたらいいんだけど……
「剣が相手だとな、どう対話したらいいもんか」
「? テツト様? どうかされましたか?」
「いや、なんでもない。こっちの話だ」
気を散らしているヒマはない。
とにかく今は精霊の森だ。
そちらの事態を早々に解決してロジャの待つ中央都市へと帰らなければ。
『──ハァ。わかってないわね、ほんと』
「え?」
振り返る。
「誰か、いま俺に話しかけたりした?」
俺の後ろにいたジャンヌ、メイスは互いに顔を見合わせて首を傾げた。
「いいえ。誰も話しかけてはいませんが……」
「……? そう?」
確かにいま、声が聞こえた気がしたんだけどな。
……あれ? 誰の声だった?
首を捻って考えるが、それ以上その謎の声が聞こえることはなかった。
非モテ俺、【女の子にモテる】転生特典もらっても非モテ。もうモテ路線は諦める。それより子供たちが困ってるみたいだし助けに行くとするか(10年後、何故か急にハイスペック美少女たちにモテ始める) 浅見朝志 @super-yasai-jin
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