約束

第22話 永遠の家

 目尻を伝う水の感覚で、葵は目を開けた。


 俺は泣いているのか?


 見上げれば、いつもと変わらない滝川木工店の自室の天井が見える。


 

 夢……だったのだろうか?


 

 でも、陽の温もりは今も肌に残っている。

 陽の声も、陽の笑顔も。


 己の手を目の高さまで持ち上げて見れば、そこに宿る陽を感じた。


 お前の全てが俺に刻まれているから―――

 

 俺はもう悲しまないぜ。



 むくりと起き上がって、窓から空を見た。


 暁の光は力を増し、世界を照らし始めている。



 陽!



 想い人へ呼びかけた。



 陽、待ってろよ!



 脳裏にくっきりと、二人で過ごしたあの木の家が蘇る。

 陽ばかりみていたはずなのに、家の細部まで思い描くことができるのは不思議だったが。

 

 だから、大丈夫だ。


 一つの夢を見つけた喜びに、葵の心は高揚していた。

 

 あの家を作ろう。


 お前と過ごしたあの家を。

 お前の待つあの家を。


 俺達の永遠の家を、俺の手で。

 

 時間はかかるかもしれないけれど、待っていてくれよ。


 

「約束する」と呟いて、空に向かって小指を掲げた。


 応えるように差し込んできた一筋の光。

 陽の温もりが葵を包み込む。


『楽しみ! ずっと側で見てるからね』

 

 やっぱり、陽ならそう言うと思ったよ。


 ふわりと笑みを浮かべた葵から、照れを捨てた素直な言葉が溢れた。


「ああ、頼む。見ていてくれ」

 


 陽、愛してるよ―――




            完



【作者より】

 妄想劇場にお付き合いくださいまして、ありがとうございました!

 感謝です(*´ω`*)

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ウェディング ~in front of Heaven~ 涼月 @piyotama

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