天界ですの!?
ジリリリリン——
(っ!?)
(2度目なのにびっくりしましたの)
彼女が電話を置いてから数秒ほどでまた音が鳴り始めた。
ワビスケはしつこい男のようだ。
ジリリリリン——
ジリリリリン——
「…………………」
(やっぱり出ないとダメですの?)
ジリリリリン——
ジリリリリリリリリン——
(っ!なんか音長くなりましたの。もしかして、爆発とかしちゃうんですの?)
ガチャとオリビアは受話器を取る。
自分にとって未知な物はやはり怖いらしい。
やはり彼女は小心者である。
「…………もしもし?」
(ん?あれ?もしもしってなんですの?)
『あ、さっきはすぐ切らないでくださいよ〜』
「す、すみません」
いつもは伯爵令嬢な彼女。
普通、こんな軽口は叩かれない。
その動揺からか、キャラ付けがだいぶおざなりになってしまっている。
『気をつけてくださいね〜』
「はい、ですの」
『では改めまして。私、謝罪専門事務所『ムーンライト』のワビスケと申します。まずはあなたの謝罪についてお話ししたいので、今から出てくる魔法陣の上で血液を一滴垂らしてもらえますか?』
彼がそう言うと、彼女に3歩ほど後ろに直径2メートルほどの魔法陣が浮かび上がった。
「…………私を召喚しますの?」
『……ん?んー、あまり言ってる意味がわかりませんの』「っ馬鹿にしてますの!?」
『あ、すみません。そんなつもりないですの」
馬鹿にされてるようだ。
伯爵令嬢様は、馬鹿にされることにも慣れて無いようである。
「ムキィー。ムカつきますの…………ゴホン。召喚獣を召喚するわけでもないのに血を垂らしますの?」
『ああ、なるほど。今回血を垂らしてもらうのは、天界に一度来てもらう事になるので、天界に耐えられるような体にする為ですね』
「なるほど、天界に……天界!?私天界に行くんですの?」
『まぁ寄ってもらう程度ですが、顔合わせもしたいですし』
(天界に行くってそんな軽いことですの!?)
(落ち着こう。落ち着くんですのオリビア)
(カンニングをしていた時くらい堂々とするんですの)
腐っても悪役令嬢である。
カンニングを全く恥じていない。
「わかりました。この魔法陣に乗って血を一滴垂すんですのね?」
『はい、あ、今から小刀送りますね』
「小刀ってなんですの?」
『……見ればわかります』
数秒後。
先程の手紙の上に小刀が現れた。
(なるほど。コガタナは短剣ですのね)
「コガタナ?が届きました」
『了解です。一度切るので、頑張ってください』
プープー
(さて、やりますの)
オリビアは受話器を置き、立ち上がる。
そして魔法陣の上に移動した彼女は手に持った小刀で指を切った。
(うっ。何度やっても指を切るのは痛いですの)
オリビアの血が魔法陣に触れた瞬間、魔法陣が光る。
が、それだけだ。
彼女も少し困惑している。
(光るだけ?他に何も起こりませんの?)
「こんにちは」
「っ!?びっくりさせないでくださいまし」
「どうも、ワビスケです」
「………(じー)」
「何ですか?」
「なんか貴方、平べったい顔してますのね」
「日本人ですから」
「ニホン?というかどっから入ってきたんですの!?」
「あそこから普通に」
そう言われて、オリビアが目線を向けた先には先程までなかった古びた木の扉が存在した。
「……この空間は不思議な現象が多いですの」
「まぁ天界ですから」
「もうですの?」
「もうです。では事務所へ行きましょうか」
「え、はい。どうやっていくんですの?」
「徒歩です」
「そうなんですの……」
異世界謝罪専門事務所〜異世界でも土下座します〜 Blue Raccoon @takanime
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