本格的時代劇、その刃は重く、血の匂いがする。

まず、冒頭から、残酷シーンです。
血。よだれ。尿。
「ひぃぃぃ!」
これから死を迎える罪人の、轡がはずれ、悲鳴がもれる。
主人公、浅右衛門は、かまわない。
ざっ!
白刃がきらめき、すさまじい太刀筋で、罪人を一刀両断……。

とても残酷です。
そして、迫力です。時代劇、かくあるべし。
血のにおいが、むっと鼻をつくような、地獄絵図。
主人公は、罪人の首を切るお役目。
そのような日々を重ねていれば、精神が正常でなくなるのは必定。
常にひそみ、いつ爆発するかわからない狂気をはらみながら、主人公は歩きます。

吉原の美しい花魁、この主人公にとっぷり惚れこんだヒロインが、ほほ……、と凄惨な血の宴でも妖艶に笑い、物語に華をそえます。
ムフフもあるよ。(←いきなり言い方。)

生ぬるい、仲良しこよしの物語なんかお呼びじゃない。手に汗にぎる、迫力の殺陣、狂気をにじませる、ものすごく強い主人公、ハラハラする展開の物語が読みたい!
そのような読者さま、この話は、期待を裏切りませんよ!
おすすめいたします。

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