第4話



 ***



「……そういえばさ」

 雪の降る道を、二人手を繋いで歩く。たった三ヶ月しか離れていなかったはずなのに、何年もそばにいなかったような気がするのはどうしてだろう。

「……純也と、ホントに何もなかったの?」

「どうして?」

「どうしてって……あいつ昔からずっと光莉のこと好きだっただろ。……多分、今も」

 そう言えば、どうしてかあの頃の朝人は純也のことを鬱陶しく思っているように見えたけれどそういうことだったのか。

 ふっと笑ってしまいそうになった光莉に、朝人は少し拗ねたように口を尖らせた。

「なんだよ」

「ううん、別に」

「それで? どうだったんだ?」

 こんな朝人の姿を見たことがなくて、少し可愛いとさえ思ってしまう。

「光莉?」

「んーと、好きだって言われたよ」

「は? え? そ、それで? なんて答えたの?」

 なんて答えたかなんて、わかりきったことを少し不安そうに尋ねる朝人に、光莉は――。

「……内緒」

「え? ちょっと、待って!」

 朝人の手を離し、雪の上を駆け出した。

「光莉ってば!」

 後ろから呼び止め、追いかけてくる朝人を振り返る。

 地面に積もった雪の上には二人分の足跡が並ぶ。

 前には真っ白な雪の絨毯が広がっている。

 明日がどうなるかなんて誰にもわからない。けれど、二人ならきっと歩調を合わせて歩いていける。

 ゆっくりと歩くような速さで。

 

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アンダンテ 望月くらげ @kurage0827

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