45,宇宙船の目撃情報 ー終曲ー

 エロイーズが男3人を倒した後、アリス達は警察へと連絡した。


 男3人は警察に連行され、アリス達は何とか事なきを得た。







 時は流れて夕方。 


 街がオレンジ色に染まる頃。


 アリス達は犯人が連行された、スコットランドヤード・フォギーフロッグ警察署の建物の前にいた。


 薄汚れたクリーム色の壁にもたれ掛かりながら、アリスが言った。


「…今日はとんでもない1日だったな。」


「…ええ、そうね。」


 アリスの隣にはレイラがいる。


 そして、彼女達の会話が届かないくらい離れた場所で、ジョンとコリンとエロイーズが話をしている。


 アリスは遠くにいる3人をぼんやりと眺めていた。


「…ごめんなさい。」


 ふと、レイラがアリスに言った。


「…えっ?」


 アリスが少し驚いた様子で聞き返す。


 レイラは続けてこう言った。


「あなた達を巻き込んでしまって。」


 それを聞いたアリスは、少し怒ったような口調で彼女を責める。


「…ほんとだよ。お前が宇宙船の正体を知りたいなんて言ったから、こんな無駄な1日を過ごすことになったんだぞ?宇宙船の正体は、スポットライトでできた影絵でしたってなんだ?全然笑えねぇし、面白くねぇ。こんな茶番劇に巻き込んだ落とし前をどうつけるつもりなんだ?」


 アリスがそう問いかけると、レイラは澄ました顔で答えた。


「そっちじゃないわ。私が謝っているのは。」


「…いや、こっちも謝れよ。」


 アリスからツッコミが入ったがレイラは構うことなく続ける。


「あなた達を危険な目に合わせたことを謝っているのよ。」


 レイラは申し訳なさそうにそう言った。


「今回はみんな無事だったけど、エロイーズがいてくれなければ、私達は助からなかったかもしれないわ。」


 それを聞いたアリスは、少し斜め上を見て考え事をした後、こう告げた。


「一応、私も生半可な気持ちで探偵をしている訳じゃない。危険な目に遭う覚悟くらいはしてるさ。だから、別にお前が謝る必要はないし、お前のせいで危険な目に遭ったとも思ってねぇよ。…知りたかったんだろ?宇宙船の正体を。お前の好奇心に振り回されるのなんて、学生時代からのことだ。」


 アリスはエロイーズ達の方を見ながら言った。


「まぁ、あいつらがどうかはわからないけど…少なくとも私は、お前の好奇心に最期まで付き合ってやるよ。私に依頼する時、お前は『地獄の底まで付き合ってもらう』って言ってただろ?…付き合ってやるさ、地獄の底まで。」


 アリスはレイラの方を向いて得意げに言った。


 レイラはそれに対して、少し笑ってみせた。


 すると、その直後、警察署から1人の男性が出てきた。


 彼はアリスとレイラの目の前で足を止めた。


 その男性は、スコットランドヤードの警部補、オーランド・ラドクリフであった。


「アリス、それにミス・ジーニアス。逮捕された3人の男達の事情聴取が終わった。」


「そうか。ご苦労だったな、警部補。それで?」


 アリスが尋ねると、オーランドが神妙な面持ちで答えた。


「3人の男達は、今回の犯行計画は自分達で考えたものではなく、他の者から伝授してもらったものだと答えた。」


「他の者?」


 レイラが聞くと、オーランドが話を続ける。


「はい。今回の計画は、秘密結社『アンピプテラ教団』のメンバーと名乗るものから、授かった犯行計画だと言っていました。その秘密結社のメンバーのサポートを受けて、今回の犯行を実行したと。犯行をコンサルティングする代わりに、アンピプテラ教団の名をこの街に広めて欲しいと頼まれたそうです。だから、宇宙船が目撃された所に、教団のシンボルマークを描き、噂を流したと言っていました。」


「アンピプテラ教団…。この街の怪事件を引き起こしていると言われている秘密結社。つまり…」


 レイラがそう呟いた後、顎に手を当てて考え込む。


 その様子を見てアリスは言った。


「裏で糸を引いてる奴がいるってことだな。意図的に怪事件を引き起こそうと、奮闘している変人がいるってことだ。」






 フォギーフロッグにはこんな噂がある。


 この街で起きた全ての怪事件には、アンピプテラ教団が裏で関わっている。


 果たして、この街で怪事件が頻発するのは単なる偶然なのか。


 はたまた、人為的な工作によるもなのか…。

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フォギーフロッグの怪事件 ~1930年のイギリスにおいて、露出狂、糞便、悪魔、宇宙船などは、街の人々へどのような影響を及ぼしたのか?その疑問に答えてくれる、とある女探偵の怪事件簿~ 正妻キドリ @prprperetto

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