後日談② その頃彼らは……



 冒険者総合雑談スレッド part674



 ……。

 …………。



 810:名無しの冒険者

 ほんで一般企業の冒険者部門採用が正式に始まったわけやが……

 おまいら、どうなった?


 811:名無しの冒険者

 万年Fランク冒険者のワイ

 エントリー10社 内定10社

 なんなん、これ……?(困惑)


 812:名無しの冒険者

 新卒の時は説明会すら参加できなかった大手メーカーから内定貰った

 めっっっさ気分がいいわ


 813:名無しの冒険者

 あまりにとんとん拍子に進みすぎて、逆に怖いんよ

 何か裏があるわけやないよな?

 

 814:名無しの冒険者

 >>813 今まで軍に徴収されていた魔石が一般に流されるようになったんや

 ほんで新技術開発のために魔石を何とか確保したい各企業が、冒険者ごと取り込もうとしてるって感じやな 

 自分で抱えた方が安上がりかつ安定しとるから


 815:名無しの冒険者

 つまり入社したら最後、ボロ雑巾のように使い捨てられて……?


 816:名無しの冒険者

 >>815 まあその可能性もなくはないけど、基本は大丈夫やと思うで

 冒険者の数自体が不足しとるから、そんなんしたら人が集まらんよ


 817:名無しの冒険者

 >>816 なる でもワイは最後まで実利で行かせてもらうわ

 理由? そんなん言わなくてもわかるやろ?


 818:名無しの冒険者

 あっ…(察し)ふーん

 

 819:名無しの冒険者

 まあ……うん 気持ちは分かる

 今まではほぼソロ活動やったから何とかなったけど、いきなり企業人はハードル高いんよ


 820:名無しの冒険者

 >>819 元ニートの悲しき定めよな

 どっちにしろ色々変わっていくやろうし、身の振り方に気を付けるんやで

 

 821:名無しの冒険者

 冒険者同士の互助組織を作るギルド構想なんてもんもあるらしいしな


 822:名無しの冒険者

 >>821 ま? それじゃあワイも出会いを期待していいんか?


 823:名無しの冒険者

 >>821 もしできたら、マコ様の争奪戦が始まりそうやな


 824:名無しの冒険者

 >>823 名だたる権力者たちがあの手この手で迫っていく未来が見える見える


 825:名無しの冒険者

 ワイはマコ様に自分でギルドを作ってほしいわ

 ほんで全国のメスガキたちを集めるんや


 826:名無しの冒険者

 >>825 富、名声、力、この世の全てを手に入れた女’月宮マコ’

 彼女の死に際に放った一言は人々を海へ駆り立てた。

 「私の財宝ですか? 欲しかったらくれてあげますよ・・・。探してください! この世の全てをそこに置いてきました!」

 女達はメスガキギルドを目指し、夢を追い続ける・・・!

 世はまさに大メスガキ時代!!


 827:名無しの冒険者

 >>826 マコ様〇さんでもろて



 ……。

 …………。






「結局、真君には断られてしまったんですね」


「そう、みたい」


 放課後、旧冒険者学校静岡校の教室。

 今現在は卒業生の学び直しが行われているその場所で、江川芳樹と柴田正利の二人は暗い表情で話し込んでいた。


 議題は、自分たちがダンジョン内に置き去りにしてしまった望月真君について。

 あの後無事に助けられたから気にするな、というメッセは来たものの、お見舞いにいこうとしたら断られてしまって、会えない状態が続いていたのだ。


 もしかしたら何か後遺症が残ってしまったんじゃないか。 

 何であの時彼を囮にして逃げてしまったんだろう。


 そんな不安と後悔が頭を掴んで離さなくてーー


「あ、あの時逃げやがった弱虫どもじゃないですか」


 不意に聞き覚えるのある声に呼びかけられる。

 見れば、四六時中テレビで見る少女が芳樹たちの前に立っていた。


「ままま、マコ様っ!? どうしてここにっ!?」


 救国の英雄。日本が誇るメスガキーー月宮マコさんだ。

 彼女のファンだと公言していた正利が驚愕に声を荒げる。芳樹もまた同じ気持ちだった。

 普段は六人の少女たちを筆頭にする大勢の人間に囲まれている彼女。

 芳樹たちのような日陰者とはそれこそ住む世界が違うはずだ。


 マコさんがその端正な眉を寄せる。


「どうしてって、ただ忘れ物を取り来ただけですよ。

 大体、私たち同じクラスじゃないですか。もしかしてクラスの女子も知らなかったんですか? 馬鹿なんですか?」


「え、あ、えへへ」


 一生に一度は聞きたいと謳われる生罵倒を聞いて、完全にトリップする正人。

 ただ芳樹には気になることがあった。


「あの、さっき弱虫と言いましたよね?

 僕たちのことを知っているんですか?」


「んーと……はい。

 あの雑魚い彼を助けるときにちょっと私も噛んでいるんですよ」


「そう、なんですかっ。ありがとうございます、助けていただいて。

 あの、それで真君の現状は知っていたりしませんか? 僕たち、何故か真君に会うことが出来なくて」


「あー、なるほどです。それで……」


 芳樹の言葉に、何かを納得したように頷くマコさん。

 そうして何故か嗜虐的な笑みを浮かべてみせた。


「ええよく知っていますよ。

 なにせ、この私と一緒になった仲ですからね」


「い、一緒にっ!? ど、どういう意味、マコ様!?」


「そのまんまの意味ですよ。

 女のイロハも知らない童貞さん?」


「う、うそだ……マコ様が、そんな……」


 衝撃の事実に正利が項垂れる。

 芳樹は驚き半分、安心半分、嫉妬少々でその事実を受け入れようとしてーー


「あはははっ、冗談ですよ。

 こんな嘘に騙されるなんて、本当にあなたたちって馬鹿ですねっ」


 まるで悪戯が成功した子供のように笑いを抱えて笑うマコさん。

 いや、事実そうらしい。テレビでは「口だけ悪い優しい子」みたいに紹介されていたのに、こんな一面もあるのか……。


「大丈夫です、彼は元気にやっていますよ。元気すぎて困るくらいです。

 だからーーそんな迷子の子犬みたいな顔、しないでくださいよ。くよくよされるのは正直目障りです」


 そんなこちらを安心させるような笑みをマコさんは浮かべてーー


「マコ様~、返事してくださ~い」


「3-Aにマコ様の影なし。引き続き捜索を続ける」


 一気に廊下の方が騒がしくなる。

 あれはマコ様親衛隊の声だ。マコさんとの時間はここまで、か。


「それでは、また友達としてよろしくお願いしますね。童貞のお二人さん」


 手をひらひらとさせて、マコさんが教室を去っていく。

 その余韻に浸るように暫く黙り込んだ後、正利が自慢げに話しかけてくる。


「ね? マコ様いいでしょ?」


「……そうですね。僕もマコ教に入信してみますかね」


 黄昏に染まる教室の中、今日も新たな被害者が生まれるのだった。



 Fin







――――――――――――――――――

 【あとがき】

 『TS転生から始まる、最強美少女への道!』

 これにて本当におしまいとなります。

 最後までお付き合いいただき、ありがとうございました! 

 詳しい後語りは本日15:00ごろに作者近況ノートに公開しようと思っています。

 少しでも楽しんでいただけましたら、評価、感想、レビューなどなどよろしくお願いいたします!


 ――――――――――――――――――


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

【完結】TS転生から始まる、最強美少女への道! 水品 奏多 @mizusina

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ