第4話 ご対面

「おーい零王、朝だぞー!」

「う、うーん…。もう少し寝かせろ…(バタン)」


 自分は知らなかった、零王が朝に弱いということを。昨日はサラサラだった黒髪も今はボサボサだ。欠伸をしながら布団(本当に布)を被る姿はもはや別人。昨日の夢の話をしようと思ったが、これは無理なようだ。そうだ、あれなら…。


「おい、妹さんに会わせてくれるとか何とか言ってたが。大丈夫なのか?」

「はっ、そうだった!少し待っていろ。10秒で着替える」

「よーい、ドン、1、2、3…」

「お、おい!数えるな!」

「4、5」

「まずい!」


 シュババババ!ボフッ!キラリーン。


「9、10!」

「ふっ、着替え終わったぞ」

「……。靴下をはいていないように見えるが…?」

「気のせいだ。ほら、こっちだ」


 零王に連れられて入ったのは、ひときわ大きい穴だった。ここだけ、天井に豆電球(学校の実験で使いそうな物とでも思ってもらえればよい)が吊り下がっている。もちろん、電池で光る代物だ。なかには久しぶりに見た布団と、その中で目を開けたまま虚空を見つめている灰色の髪をした少女がいた。


「よう、零。元気か?」

「……」

「こいつがな、今日から俺がいない間お前を守る白だ。仲良くしてやってくれ」

「……」

「……。やっぱりだめか…」


 零王によると、この子は家族がどこかに消えてしまった(おそらく天使に殺されたのだろうということだ)ことで精神が持たず、こんな感じになってしまったそうだ。しかも、天使によって背中を刺され、十分な医療器具がない今、完治は難しいとのこと。

 どうにかしたいのは山々なのだが…。


「そんな顔をするな。零もいつか受け入れられるようになる。俺は零が同じ記憶喪失で親がいないお前と関わることで何かいい影響があるんじゃないかと考えたんだ」

「へえ、それでわざわざ自分を選んだのか…」

「あと、俺は家事が苦手でな…。体が覚えていればでいいんだが、頼みたい。食事は、零は体を動かせないから、食べさせてやってほしい。それくらいだ。頼めるか?」

「もちろん、自分にとっても良い条件だろう。その話、受けよう」

「ふっ、感謝する」


 さて、となれば、料理をする必要があるわけだが…。


「零王、ここに何か火をおこすものはあるか?」

「もちろん、携帯ガスコンロがあるが?」

「よし、では零王には見回りついでにスーパーのものをできるだけ手に入れてきてほしい。電気はまだ通っているはずだから、生ものとかでもいい。ただし、消費期限だけは気を付けてくれよ。あとは欲しいものでも取って来い。どうせ人はいない。」

「生きるためだからな。了解だ」

「自分はその間に洞窟の入り口を強固なものにしておくから、注意してくれよ」

「分かった。では行ってくる」


 零王が見回り& 食料調達に行っている間に、自分は洞窟の入り口にドアを設置&それを分かりにくいように隠す作業を行う。零王には伝えているので大丈夫だろう。

 まずは、近場の工務店の跡地から簾と細めの木材、、そして何故か落ちていたツルハシを拝借し、ツルハシで洞窟の穴を四角くする。簾には木材を接着剤で両面に少しずつ間をあけてくっつけ、入り口の下部に簾+木材の最下部を埋めて固定し、上部に小さな穴をあける。そこにちょうど入るくらいの木材を簾+木材につければ、簡易ドアの出来上がりだ。梯子みたいな感じになる。


 これができたころ、ちょうど零王が帰ってきた。カモフラージュ作業は午後にして、昼食にするか。


「何をいただいてきたんだ?」

「米だろ、食パンだろ、インスタントシリーズだろ、あと、調味料。生もの系はわからなかったから、高級そうな肉と卵をいただいて、野菜はとりあえず人参とレタスとかぼちゃくらいしかなかったな。あとは水はとりあえず全部持ってきた」

「結構たくさんあるな」

「隣の花屋に手押し車があったからな。それにのせてきたんだ」


 なるほど、その手があったか。


「それにしてもすごいな、この入り口」

「ああ、防寒用にちょっとな。あとはそこの工務店でもらってきた茶色スプレーを外側だけかければ終わりだ。手伝えるなら手伝ってほしいが…」

「すまん、ちょっと用事があるから、すぐ出る。午後もここを頼んでいいか?」

「了解。ちょっと待ってろ」



 よし、とりあえず、パンと卵、レタスと言ったらあれだろ。サンドイッチ。ちょうどハムもあるし。ささっと作り終えて零王にお弁当だと言ってお茶入りの水筒と一緒に渡す。


「おお!俺の分まで!感謝だ!」

「逆にどうするつもりだったんだ?」

「いや、適当に菓子パン食おうかと」

「体に良くないぞ。ゆっくり味わって食ってくれ」

「おう、じゃ、行ってくる」


 自分もサンドイッチ食べるとしますか。

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白の傭兵団 @shallwe

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