第3話 亜神

 目が覚めると、そこは洞窟でした。

 …………。

 ここはどこだ?というか、なぜこんなところに…。


「いでぇ!」


 腹にものすごい痛みを感じ、同時に既視感デジャヴを覚える。そうか…、零王をかばって…。腹に穴が開いて…、ないぞ?なんでだ?


「おう、起きたのか、白。0.5日ぶりだな」

「0.5日…?自分は半日中寝ていたのか?」

「ああ。ところで、お前、腹を見せてみろ」

「…。変態?」

「違う!いいから見せろ!」


 言われた通り腹を見せると…。


「やっぱり穴が開いてない、か…」

「何か知ってるのか?」

「知ってるも何も、天使をボコしてお前をここまで運んでる途中で、お前の腹の穴が塞がっていったんだよ。無茶苦茶グロかった…。ウッ、吐きそう」

「!そういえば、あの天使どもはどうした!?」

「言ったろ、あの不思議な槍で全員ボコボコにしてやったぜ。と言っても、欠片も残らなかったがな…」


 結局、あの槍は何だったんだろうか?それに腹の穴が塞がるなんて尋常じゃない。しかも、ときた。どういうことなんだ?


「おい、白。お前、おかゆ食べられそうか?」

「別におかゆじゃなくても食えるが…。まあ半病み上がりだからな…」


 …結局夕飯(洞窟の外が暗かったから夜らしい)はおかゆを食べた。


「じゃあ、しっかり寝ろよ、白。明日は妹に会ってもらう。仕事もやってもらうからな。その腹なら何とかなるだろ?」


 と言って、零王は自分の寝…穴?に入っていった。


 はあ…。今日は散々だったな…。明日はいい日になりますように。というか明後日を迎えられますように。


 …………。

 …………。

 …………。


 どこだ?ここは。目を開くと、そこは洞窟ではなく、一面真っ白な世界。そして、そこに1人の中性的な顔立ちの人間?と零王がいた。


「あんたは誰だ?」

「私は太古から存在する地球を見守る名もなき亜神1柱です」

「てっ、てめぇが神かぁーっ!」

「落ち着け!零王!」

「放せ白っ!こいつを殺さなきゃ気が済まねぇ!」

「落ち着いてください。あなた方を襲っている神とは種類が違うのです。私たちは神のようで神ではない。神の様な強大な力もありません。それにここはあなた方の夢の中。私を殺すことは不可能です。まずはそこを理解していただきたいと思います」


 確かに、本物の神だったら、自分たちと敵対していたらこのような丁寧な口調では話さない、か…?

 それを零王に伝えるとひとまず彼は収まった。


「なら、なんで俺たちに会いに来たんだよ」

「あなた方は、『神の記憶』をお持ちですよね?」

「神の記憶ぅ?あの変な槍のことか?」

「それなら零王だけだろう。俺は持っていないことになるが…」

「いずれにせよ『神の記憶』についてはご存じない様子。少し情報を授けようと思いまして」

「ふん、勝手にしろ」


 そして亜神とやらが語った内容とは、

 ・人間は「神」によって作られ、「神」に関係した要素が混じっている。

 ・それを呼び起こし、莫大な力や強力ない能力を使用するのが『神の記憶』。

 ・『神の記憶』は強い感情によって解放される。

 ・『神の記憶』を使えるようになった『記憶者』は、身体がとても頑丈になる。


「そして、これが天使、ひいては『神』を殺し得る能力になるのです」

「へえ…、興味深い。聞かせてくれ」

「まず零王さんと言いましたか?あなたの『神の記憶』は、確実に『神殺ノ継承』ロンギヌスで間違いないでしょう。」

「ロンギヌスといえば…。神殺しの槍か。かっこいい能力だな、零王」

「こちらは必滅の能力が備わっている槍、触れたものを全て滅ぼす槍とでも言いましょうか、を好きな地点に配置する能力です」

「ふん、なるほどな…」


 あの槍が触れた盾や天使が崩れ落ちていったのはそういうことか…。


「そして、***、いえ、今は白さんですね」

「***…?」

「いえ、何でもありません。白さんの能力は、たぶんなのですが、『聖邪之光神』せいじゃのこうしんでしょう」

「…。何だ、その中二病じみた名前は」

「いえ、もっと中二病的な名前のもありますのでご安心を。この能力は、自分と味方の部位欠損までを瞬時に回復し、致命傷となる攻撃を無効化しつつ、相手を衰退させるサポート特化能力です」

「なるほど、何か強そうだな…」

「ただ、白さんはまだこれを解放していませんので、何らかのきっかけがないことには…」

「ああ、そうか…。まあ、いい。教えてくれて感謝する」

「私が伝えられるのはここまでです。次会うのは、あなた方が死んだ時か、白さんの記憶が戻った時になるでしょう。生き残れるよう祈っておりますよ」


 その言葉とともに、視界が暗転していくのだった…。

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