第2話 天使襲撃
「俺の家に来い。まあ、家と呼ぶには少々手狭だがな…」
「え?」
零王の家…?自分の頭がフル回転する。零王の話からするに、少し狭い家。また、さっきの話から妹がいることも確認済みだ。つまり、零王の妹と狭い空間で一緒にいることに…!?きまずい。とてもきまずい。
「丁重にお断りさせて…」
「人の話は最後まで聞くもんだ。妹は今足が動かせない、記憶がない、お前と違って感情さえもない。ほとんど植物人間状態なんだよ。だから頼む、白。妹を守ってほしいんだよ」
「俺の命は住居と同等か…。命の重みもへったくれもないな…」
「天使どもがいるこの世界で命の重みなんてないに等しい。見つかったら殺されるだけだ。悪い取引きじゃないと思うが…」
「うーん…?」
「うん、お前に拒否権はない。おら行くぞ」
「いや、え?ちょっ、首を掴むなぁ~~~~~!」
そんな腕力はいったいどこから…。そもそも首を掴まれても苦しくないのは零王が優しく掴んでいるからなのか?
とにかく、零王と(強制的に)自分が零王の家の近く、瓦礫の山を越えたその先の森に差し掛かった時だった…。
「ヒトを発見。これより排除します」
「「ヒトを発見。これより排除します」」
「「「「「ヒトを発見。これより排除します」」」」
「「「「「「「「ヒトを発見。これより排除します」」」」」」」」
「……」
「……」
「あっ! やせいの てんしが たいりょうに とびだして…」
「飛び出してこない!元からいたんだろう!ってか『大量に』って、零王、お前雑だな…」
1、2…。総勢13名の天使に見つかってしまった。剣天使が2人、弓天使が5人、盾天使が3人、槍天使が3人、か…。
と、ここで槍天使の一人がこちらへ向かって話しかけて(?)きた。
「貴様らは神に殉じるか?」
神に殉じるとは、たぶん神のために死ねるかということだろう。神はヒトの滅亡を求めているのだから、すなわち『今自殺するか?しなければ殺す』と言っているのか?この天使頭悪いな。
「お前、何言ってるか分かってんの「死ねぇえっ!」おい、零王!?」
零王は落ちていた鉄のパイプ片手に天使めがけて突っ込んでいった。
「俺の家族と、ラブコメの、
あの槍天使は、まさか零王を串刺しにした槍天使なのか?というか、零王は弓天使がいることを忘れている!このままでは零王に矢が突き刺さる!
しかし、天使も2人が零王を、2人が自分を、そしてもう1人が油断なく周りを警戒している。これでは零王に近づけない!
そして弓天使AとBが放った矢は…。
「ぐうっ!?ぐ、ぁああああ!」
「!?」
零王のパイプを持った右腕と左足の太ももに刺さる…!しかし、執念が零王を動かしているのか、零王はそのまま突っ込んでいった。
が、天使もすぐに盾天使が前に出て、零王を押さえつけ、剣天使二人が零王を袈裟切りにした。そして、槍天使に腹を貫かれ…。
「がはぁっ!ぐふっ、ぐぅうう…」
なかった。もちろん自分が間に入ったからだ。
「何してんだ、白、お前は…」
「れ、お…。、おまえ、はぁ、いもうと、まもれ、よ…。まだ、やることあるんだろ…」
「ふむ。醜いあがきだ。はぁっ!」
槍天使がもう一度槍を振り下ろし、狙い違わず自分の喉を貫いた。
「ぎぁあっ!」
まずいな…。もうそろそろ、からだが、もたねぇ…。
「しぶとさだけは一級品だが…。終わり、だっ!」
さらに振り下ろされた槍は、しかし、自分には刺さらなかった。目の前で崩れ落ちていったのだ。
「てめぇ…。白に…。何してんだゴラァッ!!!」
「れお…、その、やりは…?」
零王は片手にどす黒い長槍を一本持っていた。
「てめぇら全員死ねやぁっ!」
零王はそれを投擲し、盾天使の盾にあたって…盾がぼろぼろと朽ちていった。そして、勢いを失わずに天使に突き刺さり、天使を貫通し、後ろの弓天使をも貫き、地面に刺さって消えていった。槍が貫通した2柱の天使が盾の後を追うように朽ちていったのは言うまでもない。
そして、ここで安心したのか、自分の意識はプッツリと消えた。
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