第5話 まるで拾われた猫の様に
あの時、タマもこんな気持ちだったのかなぁ…
私は子供の頃実家で飼っていた猫のタマの事を思い出していた。保護した当初はとにかく不安そうで、特に病院に連れて行った時は、恐怖に怯えて震えていて…あぁせめて言葉が通じたら説明出来るのになぁと思っていたのだが。
あぁ…あの時のタマの気持ちが、今は本当によく分かる。なにせ今、私…いや僕、がそういう状況になっているからだ。
▲△▲△
怒涛の異世界生活初日から一夜明けると、私…じゃなくて僕はイケメンエルフさんにひょいと担がれて、とある所に移動させられた。
そこは四角いコンクリート造の様な建物で、ちょっと大きめのスーパーマーケットぐらいの規模だった。
その建物の裏口の様な小さなドアから建物内に入り、長い廊下を進み、エレベーターの様な乗り物に乗って、地下に下り、やっと到着した部屋では、まるで病院か…いや研究所の様な雰囲気で見た事もない器具や、変な薬品の様な臭いがプンプンと漂っていた。そしてそこには…
めちゃくちゃデカい二本足で立ってる恐竜がいた。
いや、知識として、いちを知ってはいた。たぶんファンタジー世界によく出てくる二本足で立って歩行するトカゲ『リザードマン』だ。そう、知ってはいるんだ…知ってはいるんだけど…リアルで見たら子供の頃に恐怖した恐竜映画に出てくる肉食恐竜そのものだ。
あまりの恐怖に、私…いや僕は思わず、私を担いでくれているイケメンエルフさんにしがみついた。
ー『○○○○○』
ー『○○○○○○』
だが、そんな怖がるショタの私の行動は報われる事なく、恐竜と会話をしたイケメンエルフさんは、しがみつく私をまるで子供をなだめるように声をかけながら引き剥がして…
なんと…僕を恐竜に引き渡して部屋から出て行ってしまった…。
ヒィィィィィィィッ‼︎‼︎‼︎
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖いっ‼︎‼︎‼︎
恐怖で体がガタガタ震え出すのが自分でも分かる、ものすごく震えてるよ私っ‼︎‼︎‼︎
ー『○○○○○○』
そんな震える私に近づいて話しかけてくる恐竜の声は、意外にもソフトで優しい声ではあるけれど…。これから何をされるのか分からない私にとっては恐怖でしかないっ‼︎‼︎
こ、これはどういう状況なんだろう?あ、あれかな?野良猫を保護した時は、最初に動物病院に連れて行って健康状態を調べてから…みたいな?あぁ、そういえば…タマも保護当時はめちゃくちゃ怖がって警戒してたよな…ほんと言葉が通じれば…せめて何をされるか分かるのに…って、ほんまそれっ‼︎‼︎
異世界に来たら言葉って、チート能力的な何かで勝手に分かるようになってるもんじゃないのかよ〜‼︎‼︎ 言ってる事分からんからマジで怖すぎるっ‼︎‼︎
ー『○○○○○○』
って思っている間にも、徐々に近づいてくる恐竜。意外にも、結構優しい感じのイケメンボイスが、以前ズブズブにハマっていたBLゲームの推しキャラに似ていてちょっと怖さが中和されたが、その優しいイケメンボイスとは真逆の、恐ろしいほどゴッツイ爪の生えた手が、徐々に私に近づいてきて…
ー『○○○○○○』
そのゴッツイ爪の先から、ふんわりと光る何かが私の額にポンと触れたかと思うと、僕は一気に意識を失ってしまった。
アラフォー腐女子は異世界で腐男子になります…か? ヘタコグサ @hetakogusa
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