第2話 おひらき ~飛ばす快速と夜桜~
はじめてのメンバーみんなでのお食事のあと、私(早妃)は佑莉ちゃんと一緒に帰ることになった。お菓子を食べて見つかっちゃったり、私だけ佑莉ちゃんの名前覚えていなかったり最悪な第一印象になってしまっていないのか心配だけれど、逆にこれだけの短い時間の中でこんなにもいろんな出来事があるなんて逆に縁を感じちゃうのは私だけかな?いつもの帰り道、友達と少し遅くまで遊ぶとこの時間の電車にはよく乗るのだけれど、初めてのお仕事?ミーティングをして、ブログを書かせてもらって、少し年の離れたとってもかわいくて素敵なお姉さんたちとのひと時を過ごして、少し大人になったような気分。失敗もドジもしちゃったけれど、そのおかげで今こうして佑莉ちゃんと一緒にいられているのかもしれないと考えると、やっぱり私はラッキーガール。アイドルになるチャンスをもらえたことも、人よりもちょっと運動が得意で元気なおかげでアイドルになれて・・・私は本当にラッキーな子。だからこのラッキーな気持ちをみんなに分けていけるようなアイドルになりたいと思った。私はお馬鹿だしドジで、どうしようもない女の子だけど、意外とそういうことを考えたり思ったりする。でも口に出すのは少し開け苦手。みんなにどう見られているか、どんな私だと思われているか何となくわかってるから、だから内面の自分はできる限り隠してる。すべてが嘘というわけではないけれど、お化粧するのと同じように、私は心にお化粧する。ああ、わたしって面倒くさいな・・・特にわけもなく思考を巡らせ、沈黙の中歩いていると、気が付けばもう駅のホームにたどり着いていた。
気まずかったのか、ホームでボーっとしている私に自販機でジュースを買って佑莉ちゃんが持ってきてくれた。私はお礼を言ってお財布からお金を取り出そうとすると、早妃ちゃんは首を横に振った。それに続いて、佑莉ちゃんはお話を始めた。
私ってね、本当に平凡で普通な女の子なの。身長も普通。男の子からモテたこともない。学校にも毎日通って、宿題もちゃんと出すけれど、何かに才覚があるわけでも熱中していたわけでもなかった。そんな時に幼馴染の子がね、高校に進学するときに陸上を頑張りたいって地元を離れて頑張る決断をして、それを私は応援した。でもね、その時に気が付いたんだ。私は大勢の中の一人を構成していたに過ぎなかったって。そう思ったときにね、急にその幼馴染のことがうらやましくなった。才能に甘えずに努力を惜しまないことは知ってた。だから無責任にうらやましいって思うのはお門違いだっていうのもわかってたよ。それでも、何をしたらいいのかわからなかったときに、とあるアイドルさんが一歩踏み出せば世界は変わるって言ってて、私はオーディションに応募したんだ。
佑莉ちゃんの真剣なまなざしを受け止めていると、気が付けば電車は何本か通り過ぎていて、私たち二人だけの時間は止まっているように感じた。周りは動いていくけれど私たちはそれに逆らうこともなく、ただそのまま、そのまま2人の時間の中にいた。そして佑莉ちゃんは続けて、私は何かに夢中になって頑張りたいって思ってアイドルを頑張ろうと思ったの。女の子なら誰しもあこがれる存在で、だからこそみんなの期待や時に嫉妬されることだってあると思う。そして誰もが報われる世界でもない。でも、頑張ったその先に、大勢の中の私じゃなくて、小松佑莉っていうオンリーワンを見つけられるようになりたいなって、自分勝手なアイドルかもしれないけれど、そう思ってる。と話してくれた。佑莉ちゃんは刹那のうちに我に返った様子で、あ、ごめん。なんか急にシリアスな話しちゃってごめん。と謝ってきたけれど、私は逆にいいことを聞けたと内心うれしかった。
ありがとう佑莉ちゃん。やっぱり誰よりも頑張って、つらいはずなのにそんな姿をほとんど見せないでみんなを笑顔にするアイドルってやっぱりすごいよね!私たちもそうなれるようにこれから頑張ろうね。と言うと、佑莉ちゃんは私を突き刺しそうなほど強い視線で私を見つめて、にこりと笑った。
後続の電車に乗った私たちは、空に輝く春の満月を見つめながら帰宅路を急ぐ快速電車に身を任せた。
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初仕事? 4月××日 秋葉早妃
はじめまして、東京都出身15歳、高校1年生の元気いっぱい最年少の秋葉早妃です。
私は今年高校生になると同時にアイドルになりました。女子高生っていうキラキラ存在になれたと同時に、もっときらめくアイドルになれてとっても幸せです。そんな私は本当にラッキーだと思っています。
実は、このブログを書く直前に会議室のお菓子を一人で食べ尽くすという重罪を犯してしまいました。(食べ物の恨みは怖いって・・・)でも、そのおかげで、初めて会ったメンバーとたくさんお話しすることができました。特に、佑莉ちゃんには少し怒られてしまって(その前にもちょっとドジしちゃったこともあって・・・)でも、逆に私は今日いっぱい失敗してラッキーだったと思ってます。(あ、佑莉ちゃんはとってもかわいくて優しい子ですよ!!)きっと何も起きていなかったら、私は人見知りなので誰ともお話しできなかったかもしれないと思うからです。でも今日のことはきっといつまでも覚えられてしまって、いじられ続けるのかと思うとすごく恥ずかしくなってきました。みなさん!私、いつでも大食いってわけではないですよーって先に弁解しておきたいと思います(笑)。
きっとこの先、つらいことも大変なこともあると思います。それでも元気な私をいつも皆さんにお見せして、ラッキーのおすそ分けをできたらいいなって思っています。
文章を書いたりするのも苦手で、読みにくかったかもしれませんが、読んでくれてありがとうございます。これからたくさん頑張っていくのでラッキーガール秋葉早妃をよろしくお願いします!
それじゃまた~
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ろふてぃどりぃむ ぶなしめじ @namanamaniku
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