登場人物

** 黒鉄くろがね


黒鉄くろがね攻一郎こういちろう

 十六歳。

 並の大人よりも頭ひとつ高い身長。ガッシリとした骨格。広い肩幅。

 彼が「お師匠」と呼ぶ謎の老人に育てられ、「弍拳にけん一殺いっさつ流」武術を秘伝される。

 実父はロボット工学の天才、黒鉄くろがね元一郎げんいちろう博士。

 両親とも、攻一郎が二歳の時に殺されている。幼かった彼自身も、顔の中央に横一文字いちもんじの切り傷を負う。その傷跡が今も顔に残っている。

 遺言により、ロボット製造に関する膨大な特許権と博士の個人研究所を相続し、経済的には不自由のない生活を送っている。

 職業は私立探偵。

 そのたぐいまれな運動能力と格闘技術が警察庁に認められ「特殊科学捜査人」の資格を付与されている。

 渋谷区笹塚の外れに小さな車庫ガレージを持ち、その一部を壁で区切って住居兼探偵事務所にしている。フィルム現像用の暗室もある。

 一ヶ月のうち半分は笹塚の探偵事務所で寝泊まりし、残りの半分は東京西部多魔たま丘陵に建つ父の研究所で寝泊まりしている。

 彼自身にも工学の才能があり、「万能自動オート三輪B2号」を自力で開発している。

 世間を騒がせている謎の人物、「闇黒あんこく探偵たんてい」(ディテクティブ・イン・ザ・ダーク)の正体である。

 普段は背広スーツ姿。ハンチング帽を被ることもある。

 冬場、ラビット・スクーターに乗るときには背広の上にダブルのコートを着て、戦闘機乗りのような(バイザー)一体型のヘルメットを被る。

 早替わり(早着替え)の名人で、背広姿から強化防護服S1号へわずか数十秒で着替える。

[所有メカ]

・万能自動オート三輪B2号(実はスーパー・メカである事を、誰も知らない)

・ダイハツ・ビー改造オープン・カー(B1号と呼ばれる事もあるがスーパー・メカではない)

・富士重工・ラビット・スクーターS101

・ニコン・F(一眼レフ・カメラ)

[武器]

・神経音波銃


闇黒あんこく探偵

 黒鉄攻一郎が強化防護服S1号を身にまとった姿。

 誰にも正体を知られていない。

[所有メカ]

闇黒あんこく機人きじんA1号

[武器]

 いろいろ


黒鉄くろがね元一郎げんいちろう

 攻一郎の父。

 ロボット工学博士。

 クロガネ・ハルシマ思考伝達液の基礎理論を築いた天才だが、彼自身は「思考伝達液の実用化は不可能だ」と言って早々に見切りを付け、ロボット操縦の最適解は内部に乗り込む「搭乗型ロボット」か、あるいは服のように着る「スーツ型ロボット」であると判断し、そちらへ研究の舵を切った。

 その時点で、共同研究者だった春島はるしま優作ゆうさく博士とはたもとを分かっている。

 攻一郎が二歳の時に夫妻同時に何者かに殺されたため、「搭乗型ロボット」および「スーツ型ロボット」の研究は未完のまま途絶したと思われている。

 既知の素材や動力源を用いるばかりでは真に高性能なロボットは製造できないと考え、未知の物質・動力源を探求していたという噂もあった。

 思考伝達液の研究を離れて以降の黒鉄博士は、異端の烙印を押され、半ば狂人扱いされ、彼の言説をまともに受けとめる科学者は一人も居なかった。

 かつての研究パートナー春島博士が時代の寵児と言われ続け、世間から持てはやされ続けているのとは正反対である。


黒鉄くろがね平二郎げんへいじろう

 元一郎博士の弟。攻一郎の叔父。

 銀行で働いている。ごく普通の会社員。

 書類上は攻一郎の後見人だが、元一郎夫妻が殺されてから現在まで、攻一郎とはほとんど付き合いが無い。


** 春島はるしま


春島はるしま美優子みゆこ

 十六歳。

 ロボット工学の権威、春島はるしま優作ゆうさく博士の一人娘。

 六歳の時、父が実験に失敗し、偶然その場に居たため神経に作用する有毒ガスを吸ってしまう。

 七日七晩のあいだ生死の境をさまよったのち奇跡的に意識を取り戻すが、その後遺症で視力を失う。

 と同時に、どういうガスの作用かは不明だが、五感のうち視力以外の四つの感覚(聴覚、嗅覚、味覚、皮膚感覚)が異常なほど発達する。

 例えば、廊下を歩く複数の人物の足音を部屋の中から聞き分けたり、常人には分からないかすかな匂いで近くの人物を判別したり、部屋に入った瞬間にストーブなどの熱源の位置を把握したりできる。

 学校には通わず、自宅で家庭教師から教育を受けている。

[所有メカ]

・催涙スプレー機能つき盲人用白杖はくじょう

[ペット]

・オスのシベリアン・ハスキー。名はアレース。盲導犬。実は脳制御ロボット。


春島はるしま優作ゆうさく

 ロボット工学博士。

 春島美優子の父。

 事故で娘が失明するまでは国立川崎大学・工学部に籍を置いていたが、事故後に心境の変化があり退官した。

 現在は、独目どくめグループからの潤沢な資金援助を受け、グループのロボット研究所で「脳制御ロボット」の研究を続けている。

 そのため、独目親子に対して頭が上がらない。

 娘の失明に責任を感じていて、将来、娘の脳を女性型ロボットに移植することで彼女の視力を取り戻そうと考えているが、現状、脳制御ロボットには重大な欠陥があり、その思いは叶えられていない。


** 独目どくめ


独目どくめ玲夜れいや

 十六歳。

 独目どくめグループ総裁の一人息子。

 黒鉄攻太郎と同じくらいの身長。並の大人よりも頭ひとつ高い。細身。

 色白の美少年だが、何かしら不健康な雰囲気を漂わせている。

 学校には行かず、自宅で家庭教師から教育を受けている。

 十六歳にして既に理学博士課程修了以上の知能を有する。

 数十年後に父のあとを継ぎグループの総裁になることを約束されている。

 運動能力は同世代の少年たちと比べ、少し劣る。

 ポケットの中に小さなガラス瓶を隠し持っている。瓶の中には「運動力倍増剤」が入っていて、これを飲むと一時間だけ超人的な運動能力を得られる。ガラス瓶表面には指紋の残らない特殊加工がほどこされている。

 外出時は、常に複数の屈強な男たちに守られている。

 必ず運転手付きのメルセデス・ベンツ大型セダンで移動する。彼自身は運転しない。

 独目家の当主は、左右どちらかの目を守り神に捧げなければいけない。それがこの家の伝統でありおきてである。

 いつかは玲夜も、神に片目を捧げなければいけない。

[所有メカ]

・メルセデス・ベンツ・300d(W189)を複数台。


独目どくめ隆茂たかしげ

 独目グループの総裁。

 玲夜の父。

 外出時は、常に複数の屈強な男たちに守られている。

 必ず運転手付きのメルセデス・ベンツ大型セダンで移動する。彼自身は運転しない。

 右の目に眼帯を付けている。

 独目家の当主は、左右どちらかの目を守り神に捧げなければいけない。それがこの家の伝統でありおきてである。

[所有メカ]

・メルセデス・ベンツ・300d(W189)を複数台。


** 小悟探偵事務所


小悟しょうご智明ともあき

 二十六歳。

 細身の長身。

 インテリの雰囲気を漂わす美男子。

 世田谷の西洋屋敷に住んでいる。敷地には母屋のほかに自動車を四台格納できる車庫ガレージがある。

 屋敷は探偵事務所も兼ねている。

 同居人は、助手の和戸わと三吉さんきち小松川こまつがわ健司けんじ

 平日の午前十時から午後三時まで家政婦が来て洗濯・昼食の準備・掃除をする。

 朝食と夕食の準備は小悟探偵自身か、三吉が行う。

 夜は、小悟探偵が母屋の寝室で、和戸三吉と小松川健司はガレージの屋根裏で寝る。

 ガレージの屋根裏には、三吉と健司それぞれが使う寝室兼勉強部屋がある。冷暖房完備。トイレ・洗面所はガレージの一階にある。

 母屋とガレージは別の建物だが、その間には内線電話用の電線が埋設されている。

[所有メカ]

・サンビーム・アルパイン・シリーズ2

・モーリス・オックスフォード・シリーズ4・トラベラー

[武器]

・神経音波銃


和戸わと三吉さんきち

 十六歳。

 中学を卒業してぐに、見習いとして小悟智明探偵事務所に就職した。

 小悟探偵の事務所兼自宅敷地内にあるガレージの屋根裏部屋に住んでいる。

 特殊科学捜査人の資格が無いので、神経音波銃は持っていない。

 小悟探偵から、さまざまな秘密の道具を与えられている。

「先生が『特殊科学捜査人』(Special Science Investigator)なら、僕らは『車庫の屋根裏捜査隊』(Garage Garret Investigators)だ!」と言って、小松川こまつがわ健司けんじと仲間たちで「ジー・ジー・アイ」を創設し、自ら隊長になる。

 といっても、もちろんおおやけに認定された団体ではない。

[使用メカ]

・富士重工・スバル・360(小悟探偵事務所の所有物)

・8ミリ映画用カメラ(音声記録トーキー機能付き。小悟探偵事務所の所有物)


小松戸こまつど健司けんじ

 十歳。小学四年生。

 孤児。現在は小悟探偵が養育している。

 小悟探偵の事務所兼自宅敷地内にあるガレージの屋根裏部屋に住んでいる。

 近くの世田谷区立小学校に通っている。

 小悟探偵から、さまざまな秘密の道具を与えられている。

「車庫の屋根裏捜査隊」の副隊長。


** 鴨山かもやま


鴨山かもやま樹三郎じゅさぶろう

 顔相がんそう解剖学博士。

 元の顔写真と変装した顔写真を比べて同一人物だと見破ったり、整形手術前と後を見比べて同一人物だと見破ったりできる。

 また、ブレた写真、ピンボケの写真、粒子の粗い拡大写真から人の顔を再現したり、損傷の激しい死体や腐敗した死体から被害者の顔を再現する能力がある。

 この能力を買われ、特殊科学捜査人に選ばれている。

 国立川崎大学・医学部顔相解剖学科の元教授。

 現在は引退して東京都多魔たま地域の夢野町という場所で隠居生活を送っている。


鴨山かもやま瀧由たきよし

 二十一歳。

 鴨山樹三郎博士の甥。

 国立川崎大学・芸術学部映像工学科在学。

 大学の図書館で1930年代に書かれた論文を偶然発見する。

 その論文には、化学合成されたある種の気体(エッチMOモー・ジョーしきガス)を利用すれば空中に三次元映像を投影し、さらにそこから音声を発することが可能になると書かれていた。

 その手順は次のとおりである。


1、まず、空気中にジョー識ガスを散布する。

2、この時点でガスは無味無臭・無色透明である。

3、そこに特殊偏光フィルターを装着した投影器で光を当てる。

4、ガスの作用で立体的な像が浮かび上がる。

5、さらに、浮かび上がった像に対して超音波を当てる。

6、すると気体分子が振動して可聴域の音声を発する。


 しかし、このエッチMOモー・ジョーしきガスには、大気中で三分間しか状態を保てないという大きな欠点があった。

 三分を超えると気体分子が化学変化を起こして黄色のガスになる。

 このガスは人体に対して無害だが、ひじょうにくさい。一番くさいオナラを煮詰めて濃縮したような匂いを持つ。

 忘れ去られた古い論文を元に、瀧由は密かに「撮影即時投影器」を作った。撮影・採音と投影を同時にする機械だ。

 自分自身の姿を撮影、声を採音、それを即座にジョー識ガスへ投影できる。投影器には「複数同時投影レンズ」が組み込まれていて、ターレットを回してこのレンズを使うと、まるで分身したかのように複数の像を投影できる。投影元は一つなので、これらの像は必ず同じポーズをとる。

[所有メカ]

・スズキ・スズモペット・SM2


〇遊星人タキヨン

 遥か百億光年の彼方にあるタキヨン星からやって来た遊星人(と、自称している)

 全身黄色の潜水服(のようなもの)を着て、黄色のマントを羽織り、鏡のように反射する球状のヘルメットをかぶっている。

 ヘルメットが頭部全体を覆っているため、顔相がんそう解剖学の権威・鴨山樹三郎博士でさえ、遊星人タキヨンの正体が分からない(それが仮に誰かの変装だったとしても)

 ヘルメットには、人間なら両目に相当する場所に二つの黒い覗き穴があり、鼻と口に相当する場所に呼吸用の黒い空気穴が開いている。

 遊星人タキヨンは、地球の大気内では三分間しか活動できず、出現から三分が経過する前に消えてしまう。

 タキヨンが消え去った後には黄色いガスが漂い、一番くさいオナラを煮詰めて濃縮したような匂いが残る。

 タキヨンに対するどんな攻撃も、その体をすり抜けてしまい効果がない。

 反対に、タキヨンが誰かを攻撃することもない。

「宇宙秘技、分身の術!」と叫ぶと、何体にも分身できる。何体に分身しようと、それらはかがみうつしのように全く同じポーズをとる。

 服の胸のあたりにタイマーが縫い付けられていて、現れてから二分三十秒が経過すると「チーン、チーン、チーン……」とベルを鳴らす。


** 屋守やもり列布人れぷとの周辺


屋守やもり列布人れぷと

 推定二十五歳。

 平均身長よりやや高い。筋肉質。

「爬虫類男」の正体。

 五年前、患者衣(入院患者が着る服)を着て、裸足で上野公園を夢遊病者のようにフラフラ歩いているところを、通りがかった米松よねまつ富蔵とみぞう考古学博士に保護された。

 そのとき右手に「屋守列布人」という名と生年月日の書かれた紙切れを握りしめていた。その内容を信じるなら、当時二十歳の計算になる。

 患者衣と紙切れ以外の所持品が無く、身元不明の男として警察に保護され取り調べを受けるが、「どうしても自分の名前・出身地・経歴を思い出せない」と主張し続けた。

 言語能力は常人と変わらず、社会人としての充分な一般常識を有し、知能テスト・精神テストの結果も正常である。ただ、自分自身に関する記憶だけを喪失している。

 その後「これも何かのえんだろう」と、米松博士が後見人を申し出る。

 博士の身元保障を受けてしばらく社会生活に関する訓練を行ない、その後、博士の友人であるモウカリ出版社長・猛刈もうかり万作まんさくの自宅ちかくにアパートを借り、「月刊・しんぴ少年」記者兼、編集者兼、社長の運転手として働いている。

「エス・エス・アイ」メンバーではない。致死性・非致死性に関わらず武器は携行していない。

 格闘技の知識は無いが、(常人の範囲内で)運動神経は非常に良く、それなりに腕っぷしも強い。

 爬虫類男に変身しなければ、肉体的な能力は常人の範疇はんちゅうである。

 ただし怪我や病気からの回復力および解毒力に限っては、人間の姿のままでも常人の数倍から十数倍である。

 チェックのシャツ、緑色のジャンパー、灰色のスラックス。

 スラックスは、米松博士の友人で国立川崎大学・繊維化学科の教授が試作した「特殊化学繊維・ストレチオン・F」で織り上げた丈夫で非常に良く伸びる生地から作られている。

[使用メカ]

・日産・オースチン・A50・ケンブリッジ(猛刈社長の運転手として)

・ダットサン・210型(モウカリ出版所有。ごく普通の乗用車。改造なし)

・ニコン・F(一眼レフ・カメラ。モウカリ出版所有)


爬虫類はちゅうるいおとこ

 屋守列布人が強く念じると、爬虫類男に変身する。

 爬虫類男が人間の姿に戻れと強く念じると、屋守列布人の姿に戻る。

 全体のシルエットは均整の取れた筋肉質の男性だが、頭部はトカゲ型に変形し、鱗が全身を覆う。尻尾は無い。

 変身すると体が大きくなる。突起を除いた身長は百九十五センチほど。

 服を着たまま変身すると破れてしまうので、あらかじめ帽子、上着、靴、靴下を脱いで変身する。

 ズボンだけは「特殊化学繊維・ストレチオン・F」で出来ているから破れない。

 頭頂部から後頭部、うなじを通って腰(ベルトの少し上)まで、背骨に沿って突起が三列に並んでいる。まるでたてがみのようである。

 頭部の形はトカゲのような流線型。目・耳・鼻・口すべて爬虫類の形になっている。

 声帯が変形して人間の言葉を話せない。「シャーッ」という声しか出せない。

 他人が発する言葉の聞き取り・理解は出来る。

 全身がうろこに覆われている。鱗のベース・カラーは鮮やかなエメラルド・グリーンで、そこに鮮やかなオレンジ色の線が不規則に何本も走っている。

 カメレオンのように自在に体色を変えて、周囲に溶け込むことも出来る。

 鱗は非常に硬く、ライフル弾をも跳ね返す。

 左肩の後ろ、肩甲骨の下あたりに一枚だけ色の違う鱗があり、その鱗は比較的柔らかく、ナイフを突き刺しただけで簡単に割れる。ここが弱点である。

 口から緑色の毒ガスを吹く。このガスを吹きかけられた人間は一〜二秒で気絶する。死に至ることは無い。後遺症も残らない。密閉した部屋に充満すれば、そこに居るもの全員が気絶する。当然だが、爬虫類男自身は平気である(毒ガスを吐く・吐かないは爬虫類男の意志で自在にコントロール出来る)

 両手両足の指の腹は、ヤモリの趾下しか薄板はくばんと同様の形状・機能を持つ。ヤモリと同じように「ファンデルワールスりょく」の作用により壁や天井に張り付くことが出来る。

 さらに両手両足の指には、伸縮自在の爪が備わる。爪の先端には毒腺があり、かすり傷を負っただけで死に至る猛毒を分泌する(爬虫類男の意志で、分泌する・しないを自在にコントロール出来る)

 両手の薬指と小指を長く伸ばし、それらと肘・脇の下・脇腹をつなぐ形で翼竜のような膜翼まくよくを瞬時に展開したり引っ込めたり出来る。

 この膜翼を使い、高いところからグライダーのように滑空する。

 風を受けて上昇したり、翼の角度を変えて進路変更をすることはあっても、自ら羽ばたいて上昇したり推力を得ることは無い。

 筋力は非常に強く、骨格も頑丈である。

 鱗の硬さ・筋力・頑丈さ、そのどれをとっても、大国が威信をかけて製作した軍用ロボットに匹敵、あるいは凌駕りょうがしている。


米松よねまつ富蔵とみぞう

 国立川崎大学・文学部考古学科教授。

 公演会の帰りに上野公園を散策していて、夢遊病者のようにフラフラ歩く屋守列布人を見つけ保護した。

 以来、列布人の後見人を務めている。

「一万年前の日本には四百種以上もの文明が存在し、そのほとんどは人間以外の知的生物によって築かれた」という仮説を数年前に立てたが、あまりの異端ぶりに自ら怖れをなして公表できずにいる。

 信頼できる一部の者だけにこの仮説を話し、彼らの協力のもと、密かに調査を進めている。

 ペンネームを使って「月刊・しんぴ少年」に記事を書いている。

 爬虫類男の正体が屋守列布人であると知る唯一の人物。

 同じ大学の繊維化学科が「特殊化学繊維・ストレチオン・F」を開発中だと聞きつけ、その繊維で織り上げられたスラックスを「履き心地試験サンプル」の名目で預かり列布人に与える。


猛刈もうかり万作まんさく

 モウカリ出版の社長。

「月刊・しんぴ少年」の編集長も兼務している。

 妻の名は猛刈もうかり益代ますよ

 一人息子の椙流すぎるを溺愛している。

[使用メカ]

・日産・オースチン・A50・ケンブリッジ(自家用。ごく普通の乗用車。改造なし)

・ダットサン・210型(モウカリ出版所有。ごく普通の乗用車。改造なし)


猛刈もうかり椙流すぎる

 十歳。小学四年生。

 彼の通っている小学校は、どういう訳か記念日が年に何回もあり、臨時休校あるいは午前中だけの日が多い。

 放課後、よく「月刊・しんぴ少年」の編集部に遊びに来る。

 父親で社長兼編集長の万作氏は「子供雑誌には子供らしい感性が必要だ」と言って、我が子の編集部への出入りを許し、さらには企画会議にまで参加させている。

 屋守列布人が運転する自動車の後部座席にコッソリ忍び込み、事件現場に勝手に付いて来る。

 わんぱく少年である。

[使用メカ]

・オリンパス・ペン(コンパクト・カメラ。お父さんに買ってもらった)


** その他


寺中てらなか美研よしとぎ

 国立川崎大学・理学部地質学科教授。

 異端の学説「地球スポンジ説」を唱えている。

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