第7話 異変
「えーーーー!うっそ!?」
香との帰り道。悟自身の幼い記憶が全くない事、記憶の手掛かりがここ蓮火町にあることを悟から聞いた香は驚きの声を放った。
「じゃあ、、、自分が何者なのか分からないってこと......?」
香が驚きの表情を隠せないまま聞いてくる。
「まあ......そうなるな。」
悟がそう返すと、いままで怒涛の質問攻めをしてきた香が急に黙りこくってしまった。
気まずい静寂がしばらく二人の間に訪れた。悟は今まで記憶がないという理由で気味悪がられ、人と接することなどできなかったため、こういう状況になった時にどう対処すればよいのか分からず困惑していた。
しばらく二人は無言で春の芽吹きを感じるあぜ道を歩いていた。あぜ道を抜け、家屋が点々と存在する住宅地に差し掛かったところで不意に香が口を開いた。
「じゃあさ!その手掛かり探し私も手伝うよ!」
香の不意な提案に、悟は思わず間抜けな声を上げかけたのをぐっとこらえた。
「それは......一体どうして......?」
悟の口から真っ先に飛び出したのは疑問の意だった。
「だって放っておけないもん!それに......」
香はそこまで言うと口を閉ざした。そして先ほどまでの憂い気な表情から一変して
「ううんなんでもない!さあ早く帰ろ!」
と明るい表情で悟にそう告げ、手を強引に引っ張り、駆け出した。
「じゃあね!悟!」
香に連れられること数分。どうやら香の家らしきところに到着したと同時に香は別れの言葉を残し立ち去った。
悟は香の後ろ姿を見送った後。しばらく香の家を観察していた。重苦しい立ち住まいの正門には「金城」の文字が刻まれていた。
即席で用意してもらった悟の家とは違い、香の家は巨大な庭園と三階建ての母屋、そして隅の方に巨大な物置で構成されており、まるで時代劇の世界に来たかのような豪勢な雰囲気の屋敷であった。
「これほどまでに巨大な屋敷......おそらく香は地主の家の娘だろうな。」
田舎ではよくあることだ。悟はそうつぶやき金城邸を後にした。
金城邸から坂を下った先に悟の家はある。先ほどの金城邸と無意識に比較し、自分の家がいかに貧相であるかを知り、悟は肩を落とした。
辺りを見渡すと田んぼの水が夕日を反射して薄紅色に輝いていた。
悟は少し錆びかけた鍵を使い、建付けの悪い扉を開き、自らの拠点へ帰還した。
殺風景な自身の部屋に腰を下ろすと悟は静かに自らの携帯を取り出した。高校の入学祝いに施設からもらったものだ。今まで電子機器と言っても施設の共用の子供だましのパソコンしかなかったため、悟はもらった時にとても興奮したのが、記憶に新しい。
だが、悟自身、知り合いはおろか家族すらいないため、いまだに連絡先が空っぽの携帯だった。
悟は空っぽの連絡先の表を見つめ、ため息をつき、すぐ携帯を閉じた。
その後、慣れない会話で疲れたのか電池が切れたように布団に倒れ込み眠った。
悟の目を覚まさせたのはその携帯の通知音だった。初めて聞く自身の携帯の通知音に驚き、確認すると一件のメールが届いていた。
悟は疑問に思った。なぜならこの携帯のメールアドレスを知っている人間は誰一人として存在しないからである。悟は警戒心を持ちそのメールを開くとそこにはこう書かれていた。
from メンバーX
to 紅月 悟
件名
真実が知りたいならば今すぐ蓮火学園へ来い
少年達の異能戦争 胡麻兄さん @gomaniisann
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