初めての恋をした

 俺は恋をしたことがない。誰も好きになれなかった。下僕の人生。

 自棄を起こそうとしても上手く出来ずに泣き寝入りしていた。

 だから自殺や暴力に訴えずに耐えてきたんだ。


 その俺が同性に恋をした。俺の欲しいものをくれる優しいやつ。他人に興味がないのに優しかった。

 俺も他人に興味がないから分かるんだ。同じ匂いがする。他人に興味がないやつの匂いは独特だ。


「俺は話すのが苦手なんだ」

「僕も同じたから気にしなくていいよ。用事があれば話せば?」

「そんなんで良いのか?」

「僕はお前に興味が無いんだ」

「それは分かるけど」

「なら次の授業に移動する準備をしろよ」

「分かった」


 俺は馬鹿のままで良いから、授業なんて出なかった。でもコイツといれば授業に出ようと思うんだ。別に勉強が出来なくても日雇いで生きていこうと思える。


「勉強が嫌いなんだ」

「そうなんだ、楽勝の事なのに?」

「お前、学年何位だよ?」

「常に一番だけど?」


 コイツにとって勉強は楽勝らしい。俺にはちんぷんかんぷんだ。意味が分からなさすぎて眠くなる。

 今日も学校は退屈だ。でもコイツが居たら違うのかもしれない。


ーー同じ班だったら良いのにな。


 席も離れているし、一緒の班だったら勉強について聞けるのに。聞いても俺に理解出来るのか分からなかった。


「お前は成績悪い方なの?」

「なんで分かるんだよ」

「勉強が嫌いそうな感じがしたんだよ」

「落ち着いて、勉強する暇がないんだよ」

「そうなんだ。僕は家では強制的にさせられるから分からないな」

「親が邪魔するんだ」


 俺には親が抱けと騒ぐとは言えなかった。コイツを巻き込んでまで俺は家の事を解決しようとは思えない。


ーー依存したら怖いな。


 親が俺に依存しているように。


「勉強って丸暗記だから覚えゲーって考えろよ」

「覚えゲーかよ。俺は暗記が苦手なんだよ」

「暗記なんて適当に複数回呟けば覚えれるんだよ、僕の家ではそういう教育を受けたんだ」

「家庭環境ってデカイんだな」


 複数回で覚えられるってどう言う事か俺には理解が出来なかった。ただそう語るコイツはどこか悲しそうだ。


「暗記が得意なのが嫌なのかよ?」

「嫌ではないよ。ただ喧嘩を売られるだけさ。自慢かよって」

「自慢じゃねぇだろう」

「そう言ったのはお前だけだよ」

「そうなのか、単純にすげぇなって思っただけだよ」

「お前だけだよ。こう言うのは」


 妬むやつの気持ちが分からない。だから俺は首を傾げるとソイツは面白そうに初めて笑った。


ーー可愛い顔で笑うんだな。


 更に俺はコイツに恋をしたんだ。



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呪いを解く方法とは……? 天馬 天魔 @kokoro1313

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