Marmalade jam~さよなら狼さん~

危険生物かれん 気まぐれ 男性

さよなら、、、狼さん

0:現実①

先生:目を閉じると 今でも思い出す、、、

妹:「、、、先生?」

先生:懐【なつ】かしい あの三日間

妹:「先生!」

先生:「ん?、、、あぁ〜、、、寝ていたかな?、、、私は」

妹:「ぐっすりと、、、良く寝れますね こんな状況なのに」

先生:「若い頃は、銃声と悲鳴が鳴り響く洞穴【ほらあな】で寝ていたものだよ、、、おっと!興味なったかな?」

妹:「わりと」

先生:「そうだよね、、、もう、少し待ってくれ そろそろ、この小説を書き終えるのだが、、、」

妹:「だが?」

先生:「タイトルと 結末が思いつかない、、、」

妹:「はぁ~、、、それは、あなたなりの 命乞【いのちご】いですか?」

先生:「いやいや、本当の事だよ」

先生:「それに、、、、私は死ぬのが怖くはない、、、怖いのは」

妹:「怖いのは?」

先生:「私を殺す 君が 私を殺したと 勘違いすることだ」

妹:「呆【あき】れた言い草ですね、、、まるで、これから あなたは 私でない 誰かに殺さるような 言い方じゃないですか」

先生:「そうさ、、、私が私を殺すのだよ」

先生:「かつて、心の赴【おもむ】くままに 狼を狩り尽くした 死神が、、、自分に殺されるのさ」

妹:「今すぐ 死にたいですか?」

先生:「少し待ってくれ、、、あと少しで 思いつきそうなんだ、、、そうだ!」

妹:「、、、なんですか?」

先生:「読み聞かせるから 聞いてくれないかね? この私の 拙【つたな】いラブストーリーを」

妹:「、、、なんで」

先生:「君が、、、彼女の妹だからだよ」

先生:「君は知る権利がある、、、彼女の最後と それを看取【みと】った 死神の無様【ぶざま】な一生を」

先生:「そして、、、私の 彼女へのプロポーズの返事を聞く権利もある」

0:マーマレード ジャム~さようなら 狼さん~

先生:家族を殺された、、、狼の一族に

先生:一族全員 1人残らず、、、残された 男は 狼ハンターとなった

先生:その血にまみれた 姿と容姿から 死神と 敵味方関係なく 恐れられた

先生:この世界じゃあ ありふれた話だ

先生:その日、、、狼たちが潜【ひそ】む 最後の集落へと赴いた 私は

先生:彼らを殺した、、、復讐のための 殺しは いつの間にか 呼吸となり

先生:私の心を蝕【むしば】んだ、、、終わりにしよう

先生:この仕事を終えたら私は、、、死ぬつもりでいた

0:過去回想①

狼:「ララ〜♪」

先生:その音痴【おんち】な狼と出会うまでは、、、

狼:「、、、あら?お客さんかしら?」

死神:「そう見えるのなら 君の目は節穴【ふしあな】だな、、、怖くないのか?死ぬのが」

狼:「怖くないわ」

死神:「なんで?」

狼:「だって、、、私は 狼だもの」

狼:「いつも 食べてる パンに怖がる 人間なんていないでしょ?」

死神:「確かにそうだな、、、だからこそ、君たちは死ぬんだ」

狼:「そうね、、、だからこそ、私たちは滅【ほろ】ぶの」

狼:「パンを食べずに 芋を食べるなり 色んな選択肢があったのにね?」

死神:「君は、、、」

狼:「ん?、、、私? ただの狼よ」

狼:「あなたが 殺してきた 愚【おろ】かな狼の最後の生き残り、、、」

死神:「、、、そうか」

先生:呼吸を整え、、、猟銃【りょうじゅう】を構える

狼:「だからね! 一つだけお願いがあるの」

死神:「お、、、お願い?」

狼:「三日だけ!三日だけ時間が欲しいの!」

死神:「、、、なぜ?」

狼:「あと少しで 書いてた歌が完成しそうなの!」

死神:「、、、歌?」

先生:そう言い 彼女は 散らかった部屋から 楽譜【がくふ】を取り出した

死神:「、、、君たちは、これから滅【ほろ】びゆく一族だ なのに 君は いったい 誰のために歌を書く気なんだ?」

狼:「これは、私たちのための歌じゃない、、、これからを生きる人のための歌なの!」

死神:「冗談だろ?」

狼:「冗談か どうかは あなたが見定めたらいい、、、とびっきりの 傑作【けっさく】を書いてみせるわ」

死神:「駄作【ださく】の間違いじゃないか?」

0:現実②

先生:こうして、私たちの不思議な 三日間の共同生活は始まった

妹:「ダウト!」

先生:「ん?」

妹:「姉さんは 歌なんて作ったことないわ、、、全てあなたの妄想【もうそう】ね」

先生:「なるほど、、、やはりか」

妹:「何が なるほどなのよ」

先生:「君なら、、、いや、君だから 分かるだろ?」

妹:「何が?」

先生:「三日間、、、それだけの時間があれば 子供一人が逃げるのに 十分な時間だ」

妹:「、、、あなたは 姉さんが 私が逃げるための時間を稼【かせ】いでいた と、言いたいの?」

先生:「あぁ、、、そうだ」

妹:「そうして、あなたは、、、作れなかった 姉さんを殺した!」

先生:「それこそ 誤解だ、、、君の 姉さんは書ききったのだよ、、、歌を」

妹:「え?」

先生:「拾ったばかりのウクレレで、、、君の姉さんは 歌を作りきったのだ」

0:過去回想②

死神:「驚いた、、、本当に作りきるとは、、、」

狼:「ね?、、、言ったでしょ?」

死神:「確かに 君は天才だ!、、、しかし」

狼:「どうしたの?」

死神:「この歌、、、誰が伝えるんだ?」

先生:当然の疑問が 口から零【こぼ】れる

狼:「これを伝えられる 人なんて 一人じゃない、、、ユーよ」

死神:「、、、冗談だろ?」

狼:「こんな時に 冗談なんて言わないわ、、、死に際よ?」

先生:二人の間には 机があった

先生:それは越えられない 私たちの大きな壁でもあった

先生:そこに 私は

死神:「君が、、、歌うべきだ」

先生:猟銃を置いた

狼:「ダメ、、、」

先生:しかし、それは 突き返された

死神:「どうしてだ!」

狼:「あなたには 生き残った後の世界がある、、、けど、私にはないわ」

死神:「俺にだってないさ!君たちを殺すために生きてきたような 男に!帰る場所なんてあるもんか!」

先生:私は 抑えていた 気持ちを吐き出す

先生:行き場のない 私たちは、、、いつの間にか 逃げ場のない 袋小路【ふくろこうじ】に立たされたのだ

先生:しかし、それでも 彼女は

狼:「大丈夫、、、」

先生:前を向いていた

狼:「あなたがいるわ!、、、きっと、あなたなら この歌を歌える」

死神:「なんで、、、」

狼:「ん?」

死神:「なんで、君は そんなに 私の事を信じられるんだ?」

先生:私は 震えた手で 猟銃を握【にぎ】りしめた

狼:「だって、あなたは 三日間も 私と床【とこ】を共にした 仲間じゃない」

狼:「あなたしか いないわ 死神さん、、、みんなをよろしくね」

先生:そうして、あの日

先生:私は 初めて 大切な友に引き金を引いたのだ

0:現実③

妹:「嘘よ、、、」

先生:「どう、捉【とら】えるか 君次第だ、、、それを証明する 証拠はない」

妹:「嘘!」

先生:「あるのは、彼女が 残した 歌くらいだ、、、」

妹:「、、、その歌は?」

先生:「この引き出しの中にあるよ、、、もっとも、原本じゃないけどね」

妹:「原本は燃やしたの?」

先生:「渡したよ、、、彼女が信じた未来のために」

妹:「どこまで 人を馬鹿にしたら 気が済むの?」

先生:「君は、、、お姉さんの事を信じてないのかい?」

妹:「姉さんのことは 一番 私が知ってるわ!」

先生:「そうだろうね、、、なら、彼女の書いた 歌についても 分かるだろう?」

妹:「な、、、何がよ」

先生:「その歌はね、、、ラブソング、、、だったんだよ」

妹:「、、、そんな嘘で 気を引いたつもり?」

先生:「気になるなら 後で 目を通すといい、、、私が それに気づいたのは 二十年後だがね」

妹:「はぁ〜、、、」

先生:「死ぬことも出来なかった 当時の私は 自堕落【じだらく】な生活をしながら あの日の歌を 壊れかけのウクレレで弾いていた、、、ある時、そこを通りかかった 少女がいてね?」

先生:「私に、こう、、、言ったんだよ、、、それ、、、とっても 素敵なラブソングだねって」

妹:「冗談にしては よく出来た ストーリーね」

先生:「まったくだ!その時、やっと 私は気づいた」

先生:「私は 私を殺せなかったわけじゃない、、、私は 彼女に生かされていたのだと」

先生:「私が 弾かされていた 歌は!彼女が 私に向けた ラブソングであり!、、、これからの未来への!悲痛な願いを歌ったものなのだと!」

妹:「笑えてくるわ、、、そこまで語れると」

先生:「妄想の激しい老人だと 罵【ののし】っても構わないさ、、、だからこそ 私は書くことにした」

妹:「何を?」

先生:「彼女への返事だよ、、、しかし、私は 歌を作る 才能も無ければ 学【がく】もない」

先生:「そこで、とある古き友人にどうたら良いか 訊【たず】ねたら 良い返事を貰えたよ」

先生:「それ、、、小説にしろよ、、、と、ね」

妹:「浅【あさ】さかな考えだわ」

先生:「当時の私は、名案だと感銘【かんめい】した!」

先生:「そして、それを書き上げるために」

先生:「たくさん作品をしたためてきた!しかし、、、」

妹:「しかし?」

先生:「私には、それを書き上げる 力がなかった」

先生:「彼女の事を思うと 筆がのらず ずるずると 引きずり 生きてきて、、、今日という日を迎えた訳だ」

妹:「そう、、、なら、ここで 私が あなたを殺したら 完成しないのね?」

先生:「残念ながら そんな事にはならない、、、」

妹:「なぜ?」

先生:「完成したからだよ、、、題名は マーマレードジャム」

先生:「最後の言葉は、、、私は 君の その甘酸っぱい思いには答えられない、、、だ」

妹:「何を言ってるの?」

先生:「後は、君が書き上げるだけだ、、、私のゴーストライターさん」

妹:「、、、は?」

先生:「やっと、私の真意【しんい】に気づいたようだね、、、先生」

妹:「もしかして、、、あなたは!」

先生:「私はね、、、書ききれない この思いを 書かせることにしたのさ」

先生:「私よりも 彼女をよく知ってる、、、君にね」

妹:「あ、、、あんたは!」

妹:「姉だけじゃ 飽【あ】き足らず、、、私さえも 誑【たぶら】かすつもりか!」

先生:「君は 勘違いをしている、、、もし、この出会いが 誰かに仕組まれたものなら、、、多分」

先生:「君の姉の仕業だ」

妹:「戯言【ざれごと】だぁ!」

先生:「あぁ、、、戯言だよ 老いぼれた 老人の」

先生:「だからこそ、お願いだ、、、妹さん」

先生:「この作品を世に出しておくれ、、、私の代わりに」

先生:「彼女と、私が、、、いつか、この世界を救う 架け橋となるために!」

妹:「、、、結局」

先生:「ん?」

妹:「結局 私は 意地悪【いじわる】な姉と、性格の悪い あなたに振り回された マリオネットなのね?」

先生:「、、、そんなことはない」

先生:「ここからが、君の物語だ」

先生:「君が 幸せになることで、、、彼女の理想は完成する」

妹:「どうかしらね」

先生:「なるさ、、、だって、君は こんなにも 愛されている のだから、、、ありがとう 妹さん」

先生:「私が 作品を書き上げるために 足りなかったもの、、、それは、彼女に愛し愛された、、、君だったのだよ」

先生:「私の妄想が 正しいのなら、、、ここまでが、、、私が 彼女に踊らされた 物語だ」

妹:「、、、他には」

先生:「ん?」

妹:「他には 言い残した ことはないの?あなたとして、、、」

先生:「、、、あぁ、そうだね」

先生:「さよなら、、、私の愛しい 狼さん」

先生:「君の人生が、、、幸せであることを 心から願っているよ」

0:私になりに 思い描いたラブストーリーが 誰かの心に届くことを願って

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Marmalade jam~さよなら狼さん~ 危険生物かれん 気まぐれ 男性 @kikenkarenn

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