第一刃亜種の舟盛りのような情報量⑩


荒井喜美の父親にして師父しふ、荒井大鴉はとりあえず、今後の未来、過酷な社会を生きていくために軍隊格闘術を教えた。


それによる技は異様な有り様であった。


それは敵の無力化、そして日本の伝統、柔道、柔術の要素が多く含まれているのだ。


つまり、殴りかかれば、投げられる可能性は充分、高い、投げられれば、マウントポジションになってしまうのは、必定だった。


百羅零子は必定により万事休すとなる。


「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ッ!」


荒井喜美によって黄金の風ゴールドウィンドのような拳の嵐が瞬く間に吹き荒れた。


それを見た雷瀬覚は緋走に質問した。


「あれはお前の■■じゃないか?ニコラ・テスラの秘められた技術は重力波発生装置、そこからブラックホール発生装置、そしてタイムマシン、まさしく時をかける少女、つまり、お前はドラゴンボールのベジータみたいで彼女はトランクスみたいか?」


それに緋走はこんな解答を用意していた。


「まさか、俺の因果律操作は時限式の未来改変だが、あの男の娘にはさせないさ」


雷瀬覚はそれにこうも返す。


時限式クロンなんてのは無くても、いきなり即席でも本当は使えるだろう?」


緋走は少し、うんざりしてきていた。


「確かにそうだが彼女は彼女だよ」


それに双橋仁九郎が別視点から質問した。


「百羅、百羅って言っても、それは表社会の綺麗事大好き人間達の言い分だ、裏社会だったら、百害あったらむしろ一利あるだ」


緋走が問われている部分をこの場合は即、理解することが出来た。


「俺も彼女もお互いの親のように甘ちゃんではないのでね、苛烈に残酷に生きてきた、それは殺し屋の金の卵とも言えるだろう?」


双橋仁九郎はその意見に頷いていた。


「その才能、俺へ牙を向けない限り、自由闊達に地獄を走り続ければいいさ、俺に牙を向けない限りだ、分かってるか迷い犬ストレイドッグ?」


どうやら、彼は釘を刺したいようだった。


それに緋走はどう返答するか悩む。


その次の瞬間には勝敗がついていた。


マウントポジションがいつの間にか解除されていて、百羅零子の優雅なハイキックが荒井喜美の頭にクリーンヒットして倒れた。


試合は百羅零子の勝利で終わった。


その頃、夜間、夜風が気持ちよく当たれるようなスペースのある北山村の豪邸、荒井大鴉と亜王堂婆娑羅が晩酌をしていた。


「猪武者め」


荒井大鴉が亜王堂婆娑羅をからかうと、亜王堂婆娑羅は荒井大鴉にこんな例えをした。


「狂犬め」


そして、それをこの森の化身が擬人化した忍者、アージーヴィカが俯瞰していた。


アージーヴィカは狂犬の娘を憂いた、そして土蜘蛛に呪われている緋走も憂いた。


その存在はそのまま山の奥へと姿を消した。


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流血刀バーンアウト 飛瀬川吉三郎 @hisekawa

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