彼女の尻は、揺れていた。

Y.T

第1話

 洗面台の鏡に映る俺。

 うーん、昨日はちと飲み過ぎたかな?

 歯を磨きながら、そんな事を考える。いつもよりも眼の開きが薄い。むくんでいるのだ。腕や肩、腰回りに浮き出る血管も少し、見えにくい。

 口内の汚れを水と共に吐き出した後、顔を濡らしてシェービングジェルをつける。肌を滑る剃刀の刃が、心地良い。ぬるま湯で髭の混じったジェルと気だるさを洗い流し、洗面台を後にする。

 本格的な洗顔は、帰って来た後だ。

 機能性に優れたタイツを上下にまとい、主張が控えめなブランドロゴの入ったフード付きのウインドブレーカーでそれをおおう。

 優れた筋肉オトコの魅力は衣服に隠されていても、醸し出されるものだ。

 さあ、扉を開けて、外へ出よう。

 外はまだ寒いが、これから始まる熱を想像するだけで、俺の心は温まる。

 肉体とのコミュニケーション、それが俺の、日課だ——。

 

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