第47話 エピローグ―カンラギ=アマネ
空腹感に
ラスターを待っている間に確かに食べたのだが、満足するほどきっちり食べたわけでもない。
それでもこんな
「カンラギ!」
「ん? ヒヤマくんどうかしたの?」
どこか
「夜明けの
「どうして? 秘密よ」
「生徒会長にでもかい?」
「……」
どう答えるべきかカンラギは迷う。
答えは一つだが――それでも相手は会長で、自分は副会長である。強気に出られる通りはない。
「あなたの口が軽いと思ったことなんてないけど、それでも言えないものは言えない。ごめんなさい」
申し訳なさそうな
これで引くだろうと思っての
「じゃあ。彼の正体を当てられたら――その、付き合ってください」
「……えっ?」
『はぁ?
そもそもヒヤマに
しかも――
(こんなことを言うだなんて、少なからず確信があるってこと?)
好意があっても行動がなかったのは、彼がどうせ断られると思ってのことであり――そして、それは正解である。
だがここで、まともに取り合わなければ、生徒会長として本気で調べ始めるかもしれない。
それだけならまだしも、その過程で周りも気付く可能性は
(……別にいっか?)
これまで散々かけてきた
来年になれば会長は卒業で、そうなれば
「もし、当てれたら付き合いましょうか」
「一応、その付き合うってのは――」
「買い物に付き合うとか、生徒会業務に付き合うとかじゃないわよ。男女の仲ってやつ――そういう意味で言ってるんでしょ?」
ニッコリと
そしてヒヤマが
「でもね、条件があるわ」
「なに?」
「一つ目――当てても外しても、夜明けの騎士が誰かについての秘密は守り通すこと」
「わかったよ」
「それともう一つ」
「条件ってあと何個ほどあるの?」
「これで終わりよ――単純に、もし外してもこれまでと同じように仲良くしてね?」
「あぁ、わかった」
(これは、本当にバレたかな~)
想像以上にすんなりと頷くヒヤマに、笑顔のまま内心で頭を
ヒヤマはこれまで、『もしかしたら付き合えるかも』と、内心で思いながら我儘に付き合ってくれた。
だというのに、今後付き合う可能性を無くした上で、
カンラギはこれからあまり迷惑をかけるのは
「夜明けの騎士の正体――それは、フォビル=マックアランのクローンだ!」
「……えっ?」
「やはりか」
「いや、違うけど……」
「えっ……?」
二人は見つめあって
クローン技術――その技術自体は地球史から存在しており、今となっては
ワームビーストの進行により、地球での生活が存続不可能であることを
そして――
しかし、牛や
それでも、カンラギならばやってもおかしくないと思われての発言は、
「えっと? 違うわよ?」
倫理観を大事にしているように見せる常識人であって、本心では化学を前に倫理など
「じゃ、じゃあフォビルさんはそもそも死んでないとか? だから――」
「それも違うわね」
「うそ……」
ヒヤマはぽかんと口を開けて、動けなくなる。
ヴォルフコルデーを操り、故郷の騎士伝説にあやかったやり口。
そして――彼女の想い人。
わざわざ秘密にする理由がシズハラにバレたくないとか、その割に本人がカンラギに
「えっと、親兄弟とか?」
「違うわねー」
「じゃ、じゃあ――」
「人類なんて元を
「うっ……」
カンラギは、自身の所業を
人でなし相手でも『人でなし!』と言ってしまうのは、
「あっ、その……
謝るという手段に引き下がるか――それとも、強気で押すか。
どう足
「ないわよ」
「ないって?」
「最初に言ったように秘密なの、ごめんね?」
「そんな――」
そんなことを認めるわけにもいかず、
「わかってるでしょ? 私は
「っ!? それは――」
それこそ確実に嘘で、平気で嘘をつく。
だが――真面目に接する相手に、小手先の嘘で
「それに――あなたは一つ
「なにを……?」
「あなたと付き合うのは
「……」
ヒヤマは思わず顔を
天女のごとく微笑んで、
そして――こんなことを言われることを
「じゃあね」
頬にかすかな
本当か? と、ヒヤマは疑問に思うが、それ以上に
「カンラギ……」
「なに?」
「そういや――リーフが聞いてたぞ」
「なにを?」
「えっと、ラスターだっけ? 彼をほっといていいのか? って」
「
「そうなのか?」
カンラギがいうのならそうだろうと思うが、それでも――
「保健室にいるなら
十番隊に入ったということは、カンラギに何かしらの思惑があることまではわかっている。
しかしながら、会長の立場にあるものが丸投げをしていい理由にはならない――それなりにまともな倫理観と責任感を持ち合わせた上で、カンラギの我儘を許しているのが、ヒヤマ=ソウジという男であった。
「もう帰ったわよ」
「えっ? 電車は動いてないのに!? 大丈夫なの?」
「えぇ、私が送ったから……」
「そっかー……?」
「へー。なにで?」
「車で」
「きみが?」
「……えぇ、私が」
間違いを犯さない人間ではないが、この学園トップを務める生徒会長――
「君が? あの車で?」
ヒヤマはじっと
パルストランスシステム――その内容をカンラギから聞き出すのは、実はかなり難しい。
カンラギを
彼らの研究技術があまりにも日の目を見ないピーキーなものを
その点で言えば、パルストランスシステムは
それはもちろん、ラスターが夜明けの騎士であったがため、カンラギは少しでも興味を持って欲しかったからである。
――逆に言えば、ラスター=夜明けの騎士が成り立たなければ、彼がいる場所は保健室のはずである。
「それって、つまり――」
ヒヤマが真相に気付いて目を見張る。
「そうね。正解よ」
カンラギは誤魔化すことなくはっきりと
一応つこうと思えば、嘘はつける。
パルストランスシステムの説明をせずに、自動運転車として乗せたと説明すれば筋道だけは通る――カンラギの人間性的に、度を
「あなたも気付いた通り、彼が夜明けの騎士よ」
話題にするタイミングが非常に悪く――正体がバレてしまい、
「だから、約束通り――外したけど正体は秘密にしてね」
順番に関しては、幸運であった。
「外した……」
未練がましくぽつりと
「これからも仲のいい――お友達でよろしく」
ある意味
「……大丈夫よね?」
カンラギは久しぶりに他人に刺されるかもと思ってしまう振り方をしたことを反省する。
「クローンか、その発想はなかったなぁ」
ラスターがバレるはずがないと思いながらも、十番隊に無理やり入れた不自然さや、ReXの
「それに……今思えばラスターくんの
金色の髪に、青色の目――そして厚底ブーツによって底上げされた身長。
マスク越しとはいえ、第二生徒会の面々は根本から違うことに気付いたのだろうが、その身体的
「意外と彼を
彼の生前、カンラギが一番接していたのはフォビルではある。
夜明けの騎士について聞かせてもらう以外にも、パイロットとしての技術が高く、
そんな男の姿に変装させる
「まぁ今回は都合良く、誤解を引き出せたということで」
だが、この行動が都合の悪い誤解まで、引き出しかねないのも事実。
「さてと、とりあえずお仕事しなくちゃね」
そして――これからの
大規模作戦が終わり関わる理由がなくなった今、嫌われないように――そして
第一巻完
一閃断空のバーサーカーナイト かむや @793tokiame
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。一閃断空のバーサーカーナイトの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます