第46話 最後の宴
「腹減った……」
冷蔵庫を開けてブロック肉とキャベツを取り出すと、肉を四つ切りにする。
フライパンに油を引いて適当に焼きながら、見事な手際でキャベツを千切りにして――めんどくさがりの料理はここで終わる。料理と呼べるほどのものかは
「ReXで
ペン回しの要領で包丁をぐるぐると
味覚が死んでいるわけではなく――むしろ王族と暮らしていただけあって
そんな、残念な料理の
魚を丸ごと
焼き上がった肉を皿に移し、野菜と
「いただきます」
塩も胡椒もドレッシングも――調味料なしで夜食を取る。
味気のないご飯だが、一人で食べる分にはどうだっていい。
戦いにおいて他人は
「そういえば、戦場に一人っきりってのは久しぶりか?」
夜明けの
実質一人きりみたいなことは多かったが、今日のように
「楽しかっ……ないないない」
ぽつりと
焼いて切っただけの料理を食べ終えると、
「先週どころか今週まで、ワームビーストのせいで休日が
やれやれとため息をつきながらも、笑っていう。
これで
そう――ラスターは知らない。
カンラギ=アマネだけに正体が知られることの意味を――
武術科や学術科にまで知られるよりも、心穏やかで平穏な生活が過ごせるのと
今はまだなにも気付かぬまま、幸せな
「
それでもいつものこととなれば、特に
料理を
もっとも
お酒は十八になってから――コロニーによっては、独自の法で二十まで禁止にしているがここでは十八だと問題だが、二十にする意味が
だというのに、この場にいる
「よぉ! カンラギ! どこ? どこだ?」
どうしようもない酔っぱらいこと、ガレスが
「来ないわよ」
「えぇえええええええ? なんでだあああ」
喜びと酒のダブルパンチで
「まぁ、ここまでできあがってたら、来れるものも来ないでしょ……」
「なんでだよ……」
一見会話が成り立っているようで、すでにカンラギの声は届いていない。
夜明けの騎士に
酔っ払いの品のない態度に目くじら立てることなく、カンラギは
「これ、どうしましょ」
渡された酒をどうするか悩み――せっかくだからと飲んでいく。
国際法では、飲酒は犯罪だがノンアルコールでならば
そして、そのために開発された薬――お酒からアルコールを飛ばし、ノンアルコール飲料へと変えるノンアルコール
たとえお酒であっても、これを
と、ここまでが法律に基づく話である。
「遅かったな。ちゃんと
部下であるラスターの心配――ではなく、夜明けの騎士の様子を気にしたリーフが話しかける。
「あなたは飲んでないのね」
「あいつらが飲んでるからな……」
リーフの視線に合わせて目をやると、シズハラが目に入る。
危機は
「真面目に見せかけて、たまにネジが外れるよね」
カンラギもゴクリとお酒を飲みながらいう。
未成年の飲酒は犯罪だが、ノンアルコール剤を入れてさえいれば罪にはならない。
それが、たとえノンアルコール剤を無効化し、ノンアルコール化を防ぐ薬を入れてもノンアルコール剤を入れていたのなら合法である!
正確には、そんなわざわざ入れた薬剤を無効化することまで想定がされておらず、法整備を行えば一発アウトの一品だが、いかんせんこのコロニーでしか
だが、学生コロニーでそうはいかない。
アルコール飲料を売る理由は、教師の存在を言い訳にできても、買う理由に言い訳にはできない。
ノンアルコールだからという大義名分と、その建前を守りながらお酒へと手を
そして、お酒一つに二つの薬品が絡むせいでかなりの値段がしたりする。
こうした背景もあって、無料酒を振る
「じゃあね。私は戻るわ」
「食べていかないのか?」
「もう、食べてるの」
夜明けの騎士の
「それにみんなの様子も見ておきたかったしね。ありがとう、リーフくん」
七割方の武術科はお酒を飲んでいるが、下戸やリーフのような危機管理の高いもの……他にも単純にノリには乗らないタイプなどは飲んでいない。
会長&副会長が飲んでいるのは、まず
「あっと、そういえばこれどうぞ」
「ん? どこの
「お
「なんで?」
リーフはもらった鍵に首を
この後の展開は、せいぜい適当に酔いつぶれて雑魚寝か、自身のクラスの部屋で寝るか――女子生徒ならば女子専用に開放されている雑魚寝部屋のいずれか。
わざわざ学校の宿泊部屋――有料の
「まさか体育館倉庫の鍵とかが良かった? 保健室は絶賛使用中よ?」
「どういう意味だ?」
なにをどのようにすれば、それらが結びつくのか?
リーフが不思議に思っていると、カンラギは余所へと目を向け、他の女の子――オペレーター相手に手を振ることで、思春期男子の脳に解答が導かれる。
「おま!? いつ知って!? っつか死ぬほど下世話だな!」
まだ誰にも言ってなければ、
「じゃあねー」
「なんのつもりだ!」
「お礼」
「なんの!」
「はぁ~」
リーフは
真綿で首を
だが――
手足を
「そういえば――」
面倒事といえば、一週間前にいきなり学術科の生徒――ラスターの投入があったわけだが、あいつがどうなったのかと首を傾げる。
「あっ! ちょっと待って、ヒヤマ会長」
部屋から出ようとしたヒヤマをリーフは呼び止めるのであった。
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