第45話 欲しかった宝物
脳波で操作しながら車を運転するカンラギは、バッテリーが半分切っていることに気づく。
「そう言えば
せっかく人通りが少ない今の間にと
化石燃料こそ存在しないが、人類が生まれて
しかしながら、ワームビーストから取れるエネルギーが主力の今、
ガソリンスタンドならぬ高圧電流の給電スタンドに着くと、カンラギは充電を始めていく。
「……クスッ」
充電をしている間に、スマホを使い明日に向けての作業をする――つもりが、喜びのあまりに声を
なんせ人がいない、
「見つけた! 本当に、本当にいたなんて!」
存在、実力――それぞれ半信半疑の所もあった夜明けの
「しかも、パルストランスシステムを使いこなすだなんて」
身
「はぁぁ~、いいわね」
自分の持つ技術を、存分の使いこなす相手というのは大変貴重である。
システムに関する理解なら誰にも負けなくても、それを操る技術はやはり別物であった。
その上で――彼の持つ感覚自体、どこかネジが外れている。
「
だというのにフルパルスコネクトを使ったラスターは、レバーを動かすのではなく、ReXの背中についているブーストを、まるで自分の体のように
自身の背中にそんなものは存在しないというのに、あれほど自然に扱えるのは――一体自分の肉体をなんだと思っているのやら。
そしてなにより――
「最っ高の形で終われた! 誰にも言わないで? ふふっ――えぇ、絶対誰にも言ったりしないわ」
まさかミレアも
言うわけがない、言えるはずがない――夜明けの騎士の行動に、全て自分が
カンラギは、誰にでもあんなに無防備に接するわけではない。
才能のある人間を手元に置いておく
だが――今回はそうはいかない。
「
カンラギはぺろりと
ラスターの存在を初めて知ったのは一週間前のこと。
しかし、夜明けの騎士に心を
「
スマホに映る男とのツーショット――フォビル=マックアランを見る。
「教えてくれて、ありがとね」
あの時の
「精が出るわね――」
一年ほど前のこと――
二丁の
「ん? どうかしたか?」
「なにをそんなに
「なんで
「別に? 授業が早く終わるって聞いてたから実験の手伝いをしてもらおうと思ってたのに……まさかブンブンブンブンとずっとそんなことをしてたのね! ってだけよ」
ぷいっと首を振って不満を表す。
自分勝手な都合だが、別に本気で怒っているわけでもなく、相手の男もその程度は理解しているため、爽やかに笑い飛ばす。
「悪りぃ、全部修行の時間に使っちまった」
にこやかにしてこの学園で一番の武術科生。
誰よりも努力家で、カリスマ性に
「これ以上はオーバーワーク。エンジニアストップよ!」
サンドバスケットを突きつけながらカンラギが訓練をやめさせる。
「なんだそれは――でも、ありがとな」
止めなければいつまでも頑張っていただろうが――やれば、やるだけ
ドクターストップならぬエンジニアストップに素直に従い、ありがたくいただく。
「うまいなぁ、これ」
フォビルは
「どうやったらこんなにうまくできるんだ?」
「経験と慣れよ」
「キミらしい答えだ」
フォビルは
「次こそは協力させてもらうよ」
様々な具材を
「それはぜひともそうして欲しいんだけどね――なにをそんなに
「焦る?」
「二年生でありながら、生徒会会長に選ばれるだなんてとっても
「そうだった……か?」
自覚のない気負いを
「このコロニーの一番上に立って、次はお
フォビルの背中に手をやりながらカンラギは
「
ニッコリと
「信じられない?」
「同じ年の頃……リトルナイトって知ってるか?」
「なにそれ?」
「最近の
「あぁ、そういえばちょっとだけ……えっと、それがどうかした?」
パラパラと流し読みした作品をいきなりいわれると思っておらず、うろ覚えで
「あれは――本当の話だ」
「まさか!?」
カンラギは
「あんなことができるものなの?」
さらりとしか読んではいないが、操作技術だけでなく、ReX自体も不可能に思える挙動が数多く
「あぁ……、それに比べて……」
苦い表情でフォビルが
無邪気に――時には子供っぽく笑い、時には誰よりも力強くハキハキとした男の弱り切った横顔。
自信と
そこに――これまで感じたことのない
これほどの男に、あんな表情をさせるまだ見ぬ誰かに、カンラギの心は
「だけど――」
なにか言うフォビルの声が耳に入らないほど、
才能の
だが――本物の才能とは、人を暗い
「――カンラギ? どうかしたか?」
うっとりと
「えっ? いいえ、なんでもないわ。他にもどんな話があるの? 教えて――」
フォビル=マックアランに影を落とす
(そういえば、最近戦術的な目処が一切立たない兵器があったっけ……)
重力力場を作って敵を
「感謝してるわ」
フリーハンドで走る車に乗りながら、カンラギはスマホを操作して、彼と
「じゃあね」
そして――それらのデータを全て
「
ReXの中での様子を思い出し、カンラギ=アマネは喜びに身を震わせるのであった。
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