第44話 二人だけの秘密
時間はすでに夜の十時、危険域を
カーナビの適切な指示と、人の居ない道路を止まることなく進めるお
「どうもありがとうございました」
「こちらこそ、ありがとう」
ニッコリと
人目につくことがないとはいえ、いきなりの行動に
これが高身長から見える景色なのかと、ラスターはどこかずれた感動を覚えながら――というよりも、なんとも言えない豊かな
「楽しい?」
「ぜ、全然!」
ラスターはガバッと外れて、全力で否定する。
「そうなの?」
およよ……と、どこか悲しそうに――悲しそうなフリをしてカンラギが聞く。完全に目が笑っている。
「どうだろうな! 想像に任せする」
楽しかったと言えるはずもなく……さりとて、不満など欠片も
「なにかあったら言ってね? 私がどうにかしてあげる」
「副会長の力で?」
「そうね――でも、それだけじゃないかも」
サッと
子供っぽい仕草ながら、思ったより似合っている――鏡を見ながら練習でもしていたりするのだろうか?
「そういや、オッドアイっぽくて、かっこいいから言ってなかったけど――」
「オッドアイ? あぁ、ちょっと待って」
「外せる?」
青い
ラスターは右目に手を
「そういや、ありがとう。これで
「どういたしまして。こちらこそどれだけお礼を言っても物足りないくらいよ。
「とても、感謝してる」
カンラギはゆっくりと近づくと、鼻先がふれあい、
一年の差があるだけでえらく色っぽい――カンラギが特別なだけであろうが、艶のある声に引き寄せられ、
だから――というのもおかしな話であるが、ラスターはいきなり
「なに……」
平静を装う表情と裏腹に、動揺混じりの上
それでも、ラスターは平常運転のまま手を頬から上側にずらしていき――そして、
「……君もカラーコンタクトしてるの?」
眼球の上に乗った
「……えぇ、ばれるとは思わなかったわ」
知りたいことを知れたラスターは抱き寄せたカンラギを解放する。
「黒じゃないのか……」
同じ黒髪黒目かと――ひっそりと抱いていた親近感だけに、思わず気になってしまった。
「そうだけど、もしかして気になる? 気になる?」
「全く!」
黒か、それ以外か――そのどちらかにしか興味がないラスターは力強く否定する。
「そう……じゃあ、いつかは知って?」
どこか
「おっ、おう……」
ラスターは別にそこまでの興味はないのだが――先程の言動が、見事手玉に取られたのだけはわかってしまった。
「ところで……夜明けの
「いない」
「いない?」
「あぁ、誰も知らない。だから、絶対――誰にも言うなよ」
バレたらろくな目に合わないことだけは、目に見えている。
『ワームビーストが来た! 君が前衛、我々が後衛』
――なーんて
前衛? 後衛? 戦場にあるのは前後ろではなく、殺せる敵と守るべき対象で構成されている。
そんな中で、訳の分からない
そして――なによりも、騎士を辞めた時点でReXに乗らないと決めている。
学術科に知られても、武術科に知られても――ついでに目の前にいる女に知られても、面倒事が増えるだけであり――だったら、せめて一つだけに
「ミレアさんとかも知らないのね」
「あぁ、
「わかったわ。約束する」
「そりゃどうも――じゃあな」
「えぇ、じゃあね。おやすみ」
そうしてカンラギは、脳波で運転する
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