第3話 初仕事達成とよぎる疑問

 でもどうやって助けるんだ?


 神に助けを呼ぶ声がしたのは良いが地図上で光っているだけで実際何が起きているか、何をすればよいかわからない。

困っている俺を見てムーノウは、何かを察したように話し始めた。


「この光っている点に触れてみるのだ! 」


 なんだ? と思いつつ言われた通り地図上に光っている点に触れると、地図が拡大されていき草原の映像が映し出された。ムーノウの割には気が利くなと思って見るとその真ん中に人影がある。何かと争っているようだ。

 どれどれ何が戦っているんだ? さらに拡大してみてみると人間が五人いる。後ろにいる二人は子供のように小柄だった。その目の前には水色のゼリー状の物体が…


「スライムだ! 」


 思わず叫んでしまった。本当にここが異世界だという実感がわいてきてワクワクしてきた。でもスライムといえば普通は雑魚キャラだろ? スライムが一匹に対して五人いるのだ。苦戦するか? と疑問が残りつつここで神の名の下で助ければ神ポイントうはうはだ!

 さっそくやろう。でもまて今は神ポイントが三ポイントしかない一人しか話しかけることができない。倒し方を教えればよいのか? 何に困っている? と考えていたら


「もぉ~じれったいの! 早く話しかけるのじゃ! 」


とムーノウが台のパネル? のようなところにあるマイクボタンを押した。

 おいおいまだ心の準備が…


「我は神ムーノウじゃ! おぬしらか我に助けをこうたのは! 」


 あ~やっちまったよ…この神様はホントに…

まぁこうなってしまったらやるしかないと腹をくくると一人の小柄な男の子がきょろきょろし始めた。

 ま…まさか


「だれだ!? 今俺に話しかけてきたやつは!? 」


まじかよ。よりによって子供に話しかけたのかこの駄女神は…

 もう飽きれて笑みすら浮かべていると前線にいる背の高い男が


「エルドンさん何言ってるんですか、だれも話しかけてないですよ! ふざけてないで早く魔法で倒しちまってください! こいつを切ろうにも剣を溶かしちまって倒せないんだ」


「まてまて今日はもう二発火球を放っちまってもう魔力がないんだ」


 なるほど話を聞くかぎり今話しかけた小さい子供が魔術師でスライムは魔法じゃないと倒せない感じか。ほかにも方法がありそうだがこれがこの世界の常識か。それよりも火球を二発でもう魔力がない? いくらなんでも魔力少なすぎじゃないか? そう思っているとムーノウが話し始めた


「聞き違いじゃないぞ! 先ほど神に助けをこうただろ。そこで我じゃ! 」


そこに帰ってきた返事が…


「神? ムーノウ…もしやおぬし助けを乞う者の前に現れては意味のない言葉を吐いて惑わす邪神ムーノウか!? 」


 俺は腹を抱えて笑った。ここまで人々に嫌われている神がほかにいるだろうか。今年一笑ったかもしれない。

少し落ち着いて横のムーノウを見ると泣くのを我慢するかのように唇をかみしめている。俺は少し不憫に感じ涙ぐみムーノウの頭をなでながら話すのを変わった。


「俺はたくみ。今日から神の補佐官になったものだ。これまでの行いは申し訳ない。ただ今この状況を打破しなければならない。俺の話を聞いてほしい。頼む! 」


エルドンは、


「たしかにこのまま戦えば俺らは全滅だ。邪神だろうが神が下界のものに謝るなんて聞いたことがない。一か八かだその話の聞かせてもらう。」


 よかった話の通じる人でと安堵しつつ、十歳くらいの見た目の割には受け答えがきちんとしていてなんなら貫禄まであるのに驚いた。まずは俺の知っているスライムの知識がこの世界にも通用するかだ。


「すまない。確認なんだがスライムの特徴と知っている知識、今の状況を教えてほしい」


エルドンが言うには、


 ・スライムは液状で刃がなかなか通らない

 ・炎魔法が一番きくのでいつも火球で倒しているが今は魔力が切れている

 ・体内に核のようなものがありそれを壊せば倒すことができるが剣で切ろうにもただでさえ液状なのに酸で核に行くまでに溶かされちまう


ということだ。

 魔力を回復する手段がないか聞いたが、あるにはあるそうだが高くて買えなく今持っていないそうだ。

スライムが襲っている考える暇がないどうする俺。考えろ。ふと五人がいる後ろを見ると馬車があり中に大きなツボがある。


「おい。後ろにある馬車の中にある。ツボは陶器か? 」


 それどころではない様子のエルドンがそれがなんだというような表情で頷いた。

剣を溶かすということは体内に酸性の層があるということだろう。たしか陶器は酸性では溶けないはず。これにかけるしかない。


「後ろにあるツボを割ってそれを剣代わりに使って見てくれ。賭けだが溶けずに核まで届くはずだ! それと刃が滑って通らないときは…」


 驚いた表情のエルドンは一瞬躊躇するが、これしかない頼むと伝えると分かったとうなずきツボを割って鋭く長い破片を持った。


前線にいる三人がスライムの注意をひいているすきに裏に回り込みさすように陶器を核めがけて突き刺した。が一筋縄ではいかない表面が液状なので刃が滑って通らない。「塩だ! 」と俺は叫ぶ。エルドンは塩をスライムめがけて投げつける。塩がかかったスライムは先ほどまであった潤いがなくなり動きが鈍くなっている。

 いまだ! 俺が叫ぶより先にエルドンは陶器をもってとびかかった。陶器の先は…見事に核に届きスライムは形を崩して動かなくなった。


何とかなったか。俺は胸をなでおろした。隣ではムーノウがさっきまで泣きそうになっていたのが噓かのようにはしゃいでいる。


「たくみ殿」


エルドンが空を見上げて話しかけてきた。


「おぬしのおかげで俺たちは救われた。先ほどは無礼な態度申し訳ない。ありがとう。」


 ひげがもじゃもじゃだ!? 顔もおじさんでもしかしてドワーフか!? 上からの映像だったので気がつかなかった。

映像が切れた。

 初めて見たが想像通りの見た目だった。あれがドワーフか。どおりで受け答えが大人っぽかった。

まぁ何とかなったしよかった。感謝されるのは久しぶりで照れるが悪くない。


ピコンッ


 部屋の中に音が響いた。なんだと思っていると

やったやったとムーノウが喜んでいる。


「これを見るんじゃ! 」


とムーノウは手に持っているスマホ? のような板を見せてきた。そこには、 十ポイント と書いている。

 この音はポイントが入った音か。さらにその下の信仰数が六人から十一人になっている。エルドンたちが信仰してくれているということか、認められたようでうれしい。五十ポイントまではまだ先は長いがこの調子でポイントを増やしていくぞ!


 初仕事を終え手ごたえを感じながらエルドンに対して一つの疑問がよぎる。

ムーノウがさすが我の補佐官だ! とほめてくれる。まぁいいかと喜ぶ俺。

まさかこの世界が自分の想像以上に狂ってるとは知らずに…

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