◎一度きりの青春を音楽に捧げて。JAZZに飛び込んだ女子大生の物語

高校時代に吹奏楽部で、ちょっとビターな青春を味わった『いちか』は吹奏楽部卒業後、音楽から遠ざかっていた。

入学した大学で一人静かな学生生活を送っていたところ陽キャから強引な勧誘を受けて、ジャズサークルとの出会いを果たす。
自由で輝かしいビッグバンドを目にしたいちかは、また楽器と向き合うことを決意する――

第一章「高校編」では、厳しい吹奏楽部の練習と、仲間たちの団結にいまいち加われない主人公の心境が語られます。
心情描写がとてもリアルで、10代の少女の瑞々しい感性が豊かに描き出されます。
いちか本人にとっては決して明るくない思い出なのでしょうが、実際の青春はむしろうす暗く悩みに満ちたもの。振り返ったときにこそ輝くのでしょう。

大学入学後ジャズと出会ったいちか。
ビッグバンドというと一般的にはグレン・ミラーのような古いスウィングジャズをイメージするかも知れませんが、実際は多種多様です。
マイルス・デイヴィスを思い起こさせるようなモダンジャズや、古典的な調性から解き放たれたモードジャズも演奏されます。

今まで吹奏楽部やクラシックの常識に生きてきたいちかがジャズの世界で何を見て感じていくのか?
青春×音楽というテーマを正面から扱った本作、ぜひ読んでみてください!

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