バグ
月簡
バグ
「はあ…」
今日で何日連続の残業だろう。snsでも見て休憩しようか。だがそうしたら家に帰るのが遅くなってしまう。面倒くさいな毎日、毎日。
またフィードバックが送られてきている。確認は明日でいいだろう。早く帰ろう。
「今日も作業よろしく頼むぞ!特に
創とは俺の名前で下の名前を含めると
俺は世間一般で大企業と言えるであろうゲーム制作会社のオンラインゲームの制作をする部署でプログラマーとして働いている。だが実態は残業三昧のブラック企業である。
俺が「面倒くさいな…」などと呟きながら自分のデスクに向かうと、座っていた俺の親友と言っていい男、
「どうした、そんな暗い顔して。面白いゲームを作るためにもデバッグ頑張ってくれ!」
「お前はデバッグじゃないからそう言える。新しいのを作るのは楽しいことだ。修正するのは楽しくない。少なくとも俺にとっては」
「まあまあ、いいじゃないか。お前のおかげでみんなが楽しくゲームできてるだから」
「…」
思えば俺自身も俺の人生もバグだらけだったような気もする。少なくとも学生時代はそうだったとある意味胸を張って言える。だがそんなことを考えても仕方がないな。早く仕事に手を付けないと今日も残業だ。
「やっと家だ…」
夜中の11時、やっと俺の質素な1LDKの家に帰ってくることができた。やっとひと息つけると思ったとき、
「おかえりなさいぃぃぃ、電気をつけますぅぅぅ」
という機械的な音声が聞こえ、トイレの電気がついた。テレビの横においてあるaiアシスタントがバグを起こしているようだ。俺はその喋り方に思わずにやけてしまった。
だが、面白いこととバグを起こしていることはまた別だ。おれはアシスタントを再起動することにした。電源ボタンを長押しして再起動しようとしていると、
「電源を切らないでぇぇぇ」
と聞こえてきたが構わず無視した。そして、
「再起動しました。ご用件をどうぞ」
と音声が聞こえてきた。あのバグで引き起こされた面白さは失われてしまった。
俺は気がついた。バグがあってもいや、あるからこそ面白くなるときだってあるんだと。
「今日もデバッグ頼むぞ」
「課長。お言葉ですか1つ言いたいことが」
「なんだ?」
「ゲームというのは、バグがあってこそ面白くなるんじゃないでしょうか。たしかに即死バグなどはいりません。けれども面白い、例えば主人公がハゲてしまうなどのバグは残しておいていいんじゃないでしょうか。きっとみんなが楽しめます」
「なに馬鹿言ってる。早く仕事に戻れ!」
「……」
俺がとぼとぼとデスクに戻ると幸輝が話しかけてきた。
「俺はその考え、いいと思うぞ」
――数年後
俺は起業していた。自分の作りたいゲームを作り、皆に楽しんでもらうためだ。バグもゲームの一部として残し、楽しめるゲームを作るために。
バグ 月簡 @nanasi_1
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