第41話
放射能汚染濃度が90%を越えたウルグアイからの測定装置による送信を受け取ったのは数日前のことである。
ガルデスは、
「壊滅か」
とだけ呟いたその日の事を思い出していた。
「艦長、サウスシェトランド諸島を見つけました」
「うん、念の為だが放射能測定装置を打ち上げてくれ、それと、全艦、潜望鏡深度まで浮上」
「了解、全艦、潜望鏡深度まで浮上」
暫くすると通信士が報告する、
「放射能汚染濃度5%以下」
「よし、波の上に出るぞ、浮上だ」
「了解、全艦浮上」
「何処か、艦を停泊できそうなところを見つけてくれ、そこからはゴムボートで上陸しよう。それからライフルと投網に潜水服だ。よーし、食糧を稼ぐぞ」
そう言ったガルデスに、通信士が更に声を掛ける。
「南極からです」
「何だって、南極?」
「出ますか?」
「当然だ」
通信士が送信を繋ぐと受信機から声が聞こえる。
「こちら南極基地、どうぞ。レーダーで貴艦を捉えることができました」
「こちらウルグアイ軍大型巡航型潜水艦くらま、艦長のガルデス」
「了解、こちら南極基地。ようこそ南極基地へ。レーダーで見るとサウスシェトランド諸島に立ち寄られてからこちらに来るものと思われますが?」
「その通りだが、どういう事でしょうか?」
「こちら南極基地では、既に3カ国以上の一般市民と軍人が潜水艦で集まっております。誘導いたします。サウスシェトランド諸島を出港するときに連絡ください」
「艦長」
と心配そうに通信士が言うが、
「既に戦争は終わっているんだ、協力して生きていこうじゃないか」
そしてガルデスは通信機に向かい、
「了解、よろしくお願いします」
と答えた。
ガルデスは腕を組みながら微笑んでいる。
「ねぇ、司令官、言った通りだろ。この星自体が多国籍国家だと思わないかい? それにみんなが気付いていれば、国籍なんて関係ない。みんな地球人だよ」
ガルデスの胸の中で、糸川の声が聞こえたような気がした。
「そうだね、艦長。戦いに使う力が誰かを助ける為の力に使われていたなら、私もそう思うよ、イトカワ」
終わり
地上から祈りを込めて 織風 羊 @orikaze
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