ほんますごい。

総題「わが西遊記」の一篇。
何年かぶりだろうか。ことによると何十年ぶりかもしれない。
当時私は二十代だったようにおもうが、初め読んだとき、さまでおもしろいともおもえず、看過してしまっていた。今のいままで。
再読し、非常におもしろいとおもった。文章のベースは中島家伝来の漢文であり、内容としては西遊記を材とし、東洋思想ーーというか中国伝来の思想をベースとする。さりながら、骨組み、中身を成すものとしては西洋の思想、文学がある。やり方としては、すでに芥川龍之介があるけれど、ある意味芥川龍之介を越えているのではないか。それを歪さと感ずる方もいるだろうけれど。
中島敦はゲーテをよく読んでいたようだが、なるほどゲーテを彷彿とさせる部分がある。
私は空海の若きころの著作を連想しもしたが。

相変わらずうまい。美しい描写。迫力のある場面。諧謔。快い読後感。

中島敦、ほんますごい。

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