その年の秋、じようは、はたして、だいとうげんじようほうぐうし奉り、その力で、水から出て人間となりかわることができた。そうして、勇敢にしててんしんらんまんせいてんたいせいそんくうや、たいな楽天家、てんぽうげんすいちよのうとともに、新しいへんれきの途に上ることとなった。しかし、その途上でも、まだは昔の病のけ切っていない悟浄は、依然として独り言の癖をめなかった。かれつぶやいた。

 「どうもだな。どうもに落ちない。分からないことをいて尋ねようとしなくなることが、結局、分かったということなのか? どうもあいまいだな! あまりみごとなだつではないな! フン、フン、どうも、うまくなつとくがいかぬ。とにかく、以前ほど、苦にならなくなったのだけは、ありがたいが……。」

──「わが西遊記」の中── 

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悟浄出世 中島敦/カクヨム近代文学館 @Kotenbu_official

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