僕は生きる、、、【忘れてはいけない大地震】

たから聖

第1話 僕は生きていく!

平成7年、1月17日、、、。

紗夜は何気ない朝を迎える……。


書道が趣味で、それなりに上手く書けて、

トロフィーなんかも貰えるほどに慣れた。


いつもの如く、

筆を用意する。墨をすっていた時に【カタカタカタ……】と

揺れだし…やがて


大きな揺れを感じた。


幼いながらも僕は、


名古屋は、地震があっても

それ程揺れは無かったが……


慌ててテレビを着ける。一瞬目を疑った。


惨劇がテレビを支配する。僕は泣いてしまった。


【津波が発生しました!!危険です!!逃げて下さい!!!避難して下さい!!】


アナウンサーは必死に現状を伝えようと冷静を装うが

とてもじゃなかった。


みんなが慌てふためく。日本は

一体どうなってしまったのか??!


未曾有の恐怖が皆を不安にした。


忘れもしない。

あの惨劇を、、、。僕はその頃、

神戸に住む従兄弟に連絡を入れていた。



だが、連絡がつかない。

【プルルルル。プルルルル。】


無常に鳴り続ける携帯……

誰も出ない。



そして母親と父親が帰ってきた。

たまたま近所まで

用事が出来たとの事だ。こんな時に、なんて言えば。


母親は、気が動転していた。


【食べ物!!食べ物が買いに行かなくちゃ!!飲み物も!!】



父親は、現金の持ち合わせが余りなくて何を思ったのか??

ミネラルウォーター数本しか購入してきて無かった。


コンビニでは、暗がりの店内で

店主が、動かないレジを置き去りに、電卓で商売をやりながらも、

慌ただしく対応していた。




僕はとにかく、従兄弟の住んでる地区をテレビで放送されたので


見ていた。


の一言。



【何が?たかだか地震だろ?嘘だよな??りゅう君は無事だろうか??】



りゅうくんとは、僕と同じく書道をしていた。


いつも見せ合いっこしては

お互い切磋琢磨していたのだ。




▶▶▶▶▶▶▶


地震発生から数日後……。


地震に名前が付けられていた。

《阪神・淡路大震災》




悲しみが溢れてくる。


未だにりゅうくんとは連絡が取れないのだ。


絶望的すぎる状況だったが

どこかで僅かな望みを持っていた。



母親も、父親も、テレビに

かじりつきだ。



僕はりゅうくんと、いつか逢えると信じて

気分を落ち着かせ書道をしたためていた。



何度も何度も

りゅうくんに届くように。



失敗に失敗を重ねた結果……。


僕なりに納得いくモノが書けた。




りゅうくんや皆に向けた言葉は……


という在り来りな文字だった。




だけど、、りゅうくんは、遺体で発見された。


僕はたくさん泣いた。


泣いて泣いて

泣き腫らした。




悲しみが次々と襲って来る。

眠れなくなった。



りゅうくんが姿を見せては悲しく微笑む夢ばかり見るんだ。



その夢は数年間続いて、僕は

精神科に通うようになった。


ドクターは、いつも僕を励ましてくれた。

待合室に居ても、殺風景なので

何処か温かい心になるような

物を置いてはどうだろうか?と


看護婦さんに何気なく話した。





そう、それはその日のウチの出来事だった。



病院から家路に着くと

留守電メッセージが入っていた。


再生してみると、

看護婦さんからだった。


滅多に無いのに!?

どうしたんだろう?


内容は、




【紗夜さんの書道を飾りたいわ。お願い出来るかしら?待ってます】と入っていた。




僕はりゅうくんに向けて書いた、

【希望】という書道を次回の診察時に持ち込んだ。


他の人にも頼んだらしく、、



色とりどりの絵や切り絵、または

僕と同じく書道もあった。




殺風景な待合室が少し明るく感じた。僕はその風景を見ながらも、


家では《作業療法》になる書道を続けた。




阪神・淡路大震災




たくさん失った物はあったが、

僕は生きていく。



それでも、病気でも、

生かされていることに意味があると感じざるを得ない。




幼い頃に切磋琢磨していたりゅうくん。


いつも話していたね。




【僕はプロデビューするんだ。書道家として。】


そして母親と父親に話す。



『俺が夢を引き継いだら悪いかな??!』




母親も、父親も久しぶりに笑顔を向ける。

【何事も、やらなくては始まらないわ。】




と……賛同してくれた。

そう、ボクは胸に刻む。



『忘れてはいけない大地震』


たくさんの犠牲を見てきて、生きている意味を探す事が、




恩返しになるのでは無いか??




僕は今日も、

筆を走らせる……。






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