なんにもしたくない今日この頃

「先輩、入りますよ?」

「どぞー」

「お邪魔しまーす」


 三森みもりさんの会社の後輩である結城ゆうき君。

 2人は先輩後輩の関係であるが、なんだか微妙な関係でもある。

 三森さんが会社の飲み会で泥酔した時のこと。

 結城君が彼女を家まで送り届けたことで、いつの間にか、飲み会で三森さんが酔っ払うと結城君が送るようになっていた。

 そうしたら、三森さんはスペアキーを彼に渡し「何かあればよろしく~」と言った。

 結城君が出勤初日に三森さんと連絡先を交換していたので、仕事のやり取りの他に何気ない会話もしていた。

 その延長線上で、たまに三森さんがめんどくさがって結城君を呼び出すようになっていて、今がある。

 彼は呼び出されても文句1つ言わない。

 むしろ、まんざらでもないようだ。

 初めて三森さん家に上がった時、部屋は綺麗だが、テーブルの上に必要最低限の物で埋めつくされていた。

 台所はカップ麺が多く、これは健康面が心配になった結城君は、近くのスーパーに向かい買い物をして、三森さんにしっかりご飯を食べてもらった。

 それからは定期的にご飯を作りに結城君は現れ、三森さんを支えている。

 三毛猫のみぃちゃんは彼が来ると直ぐに近寄る。

 分かっていた、餌が貰えるということを。

 もちろん、三森さんはきちんとみぃちゃんに餌を毎日与えてはいるが、結城君が買ってくる餌の方がちょっと高いだけあってみぃちゃん的に美味しいのだろう。


「先輩、今日はカレーでいいですか?」

「あー、いいねー」

「じゃあ作りますね」

「んー、たまには手伝うー」

「じゃあじゃがいもの皮剥いて下さい」

「はーい」


 たまには三森さんは手伝うのだ。

 2人は仲良くカレー作りに集中する。

 その様子をみぃちゃんは優しい眼差しで見ていた。


 めんどくさがりだけど、仕事は出来ちゃう三森さん。

 そんな先輩を健気に献身的に支えている後輩の結城君。

 そして、2人を見守る三毛猫のみぃちゃん。

 2人と1匹の日常は、穏やかであった。


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【短編】三森さんの日常はぬくぬくである 奏流こころ @anmitu725

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