幼形のマヌー

田中陽太はいつもぼんやりと生きている高校生だった。ある日、下校途中の橋の下で不思議な生物に出会う。身長五十センチほどの、ゼリー状の肌で覆われた、まるで人間の赤ん坊のような生物だったが、大人びたしわがれ声で、陽太を馬鹿にしたようにあしらった。名前はマヌー。大きな地震で裂け目ができた断層から川に流れてやって来た。やがて、陽太はマヌーが一千万年前に現れた突然変異した哺乳動物だったことを知る。五百年前に人類が誕生するまでに、数多くの変異した哺乳類が現れては消えたなかの一種、つまり人類にはなれなかった動物だった。やがて、マヌーは突然姿を消す。短い日々にマヌーが教えてくれたことを噛み締め生きる田中陽太だった。現代「科学」ファンタジー・ストーリーです。