夢の中と次の舞台

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「おーい」


「おーーーーーい」


「おいってば!!!!」


頭の上から女性の声が聞こえる。


「なんでしょう?」


頭を上げずにそう答えた。


「いや失礼過ぎない?頭上げないで返答するかな普通?」


「あぁごめんなさい。ちょっと死にそうだったもので」


頭を上げると、どこかで見たことのあるような女性が浮かんでいた。


真っ白い空間に白いワンピース、そして白い長髪の女性。


「あなたは確か....」


「そう!さっき会ったよね」


「あぁやっぱり、あなたはショッピングモールに立っていた銅像さんですね」


「銅像さんってなんか嫌だから女神さんって呼んでちょうだい?」


とても笑顔で女神さんはそう言った。


「はい」


まだ頭が追いついていない。ここは夢なのだ。いつも見ている夢。

いつでも起きれるし外の時間も分かる。

先ほどトロールにやられた横っ腹が痛い。夢なのに痛いのだ。


「うーん錯乱状態かな?」


「ここは夢と現実の間だよ」


「間...?とは」


「君はね、今移動中なの」


「ごめんなさい理解が出来ません」


「ん-と君さ、≪ゲート≫ってスキル使ったでしょ?」


「はい。苦し紛れに。」


「その≪ゲート≫なんだけどね、別世界へ転移する能力なの。」


「で、今その転移中ってわけ!」


女神さんが懇切丁寧にスキルの説明をしてくれた。

どうやら≪ゲート≫とは地球から別の世界に移動する能力のことらしい。


「それで、移動中になぜこのような空間で一番重要そうな女神様が目の前にいるのでしょう?何か試練とか課されますか?」


「ふふふ。面白いこと言うのね君は」


「移動には少し時間がかかるし、その間本当だったら意識はないはずなんだけど、君って夢の中でもしっかり意識があるのね?」


「ええ、昔から夢を夢だと認識して過ごしてきましたので。」


「まぁいいわ。とにかく、君は≪ゲート≫を使い別の世界へ移動中なの」


「分かりました。」


女神様は元気なんだなって思いながら自分の状況を整理する。


まずショッピングモールの2階からトロールを発見。


「ねぇ」


その後2階から飛び降り避難してきた人たちを庇う。

トロールに刀を折られ、両親へ謝罪をし、≪ゲート≫と叫んだ。


「ねぇ」


そしたらここに居た。


「ねぇってば!」


「あ、はい。すいません考え事してました。」


「女神様よ?私。無視する?普通....」


「ごめんなさいごめんなさい。それでどうしたんです?」


「まぁいいわ。それでね、あなたは世界を渡ります。が問題が一つあります」


「問題?ですか」


「えぇ、≪ゲート≫は2年に一度しか使えません。」


「ほう?」


「つまり、元の世界へ戻るためには最短2年後となります。」


「なるほど?」


「死んだら元の世界へモンスターとなって蘇ります。」


「もう1回」


「死んだら元の世界へモンスターとなって蘇ります。」


とんでもないことを女神様は言い放った。

つまり僕がこの先死ねば、さっきのトロールのようになるってことか....?

絶対の絶対の絶対に嫌なんだが。


「ただし、現世に未練がなく心から死を受け入れた者はしっかり成仏します。」


「別の世界で死んで悔いがないって無理なんじゃ...」


「持っているスキルが強ければ強いほど、協力なモンスターになってしまうの。だから≪ゲート≫持ちの君には絶対に未練がある状態で亡くなってほしくないんだ。」


「≪ゲート≫って強いんですね」


「そりゃもう強いわよ。緊急脱出装置みたいなものでしょう!」


その名の通り緊急脱出で使いましたが。


「でも2年帰れないんですよね?」


「そうね。」


「何もしらないところで2年ですよね?」


「そうよ。」


「弱くないですか...?」


「考え方よ!だって別の世界へ行って2年間修業して帰ってこれるんだよ?精神となんとかの部屋みたいじゃない。」


「ノーコメントで」


女神様は現代に詳しいらしい。


「それに、ここで私と喋れる人なんて君で二人目よ。だから会えてうれしいわ。置田総司君。」


「僕の名前知ってたんですね。」


「まぁ女神ですから」


「なるほど。説得力があるようでないような。ちなみに色々質問してもいいですか?」


「いいけど答えられないものもあるわよ」


「何故世界はあのようになってしまったのでしょうか?」


「ん-。説明が難しいけど、交わろうとしてるのね。世界が」


「ごめんなさい全然理解が出来ません。」


「世界はね。君が生まれた地球とは別に合計で10個あるのよ。その中で4番目の世界が地球ってわけ。」


「4番目...」


「そう、それであなたがこれから行く世界は3番目の世界です」


女神の口から出てくる情報はどれも理解するまで時間がかかった。


「まぁ3番目って言っても、1,2番はもう無いようなものだけどね...」


「つまりあの黒い雲みたいなものは3番目の世界と地球を繋ぐゲートみたいなものってことでしょうか...?」


「おお!さすがね。その通りよ。死者の魂が飽和状態になってしまうと、怨念がモンスターとなって次の世界へ渡ってきてしまうの。容量不足?って言えばわかりやすいかな。」


「わかりやすいですが、それだと3番目の世界では死者が飽和状態ってことですよね?何が起こってるんです...?」


「1番目と2番目の死者達が世界を荒らして戦争みたいなことをしているわね。」


絶句した。


これからそんなところに行くのかと。

自分がトロールになるのが容易に想像できた。


「でも安心して!モンスターを倒したらそのモンスターは渡らないから!ある意味強制成仏ね!」


「いやそのモンスターに殺されそうになったんですが?」


「そうとも言うわ!」


さっきからこの女神なんだろう。鼻につくというか。

敬わなくていいよねこの女神。なんか適当な感じするし。


「はぁ」


「と、とにかく。これからあなたは世界を渡ります。そこで行ってもらいたいのは数多くのモンスターを成仏させること。そうすればスキルも増えるし強くなって現代に戻れるわ。」


「話は分かりました。けど言語とかそこらへんは大丈夫ですか?」


「えぇ、そこは心配しなくていいわ」


「なら良かったです。色々と心配ですが。」


「ちなみに、私と喋ったなんてことほかの人には言わないほうがいいわ。誰も信じないでしょうから」


「そうなんですか?」


「ええ、私と喋ったことある人類なんてあなたと」


パリン


「あら、もう時間みたいね」


「楽しかったわ。ありがとう。そして頑張ってね」


「次来るときはお土産もお願いね。」


「お土産...?」


僕はこれからどうなっていくのだろう。

もう元の生活には戻れない。それだけは分かった気がする。


さようなら。一人寂しいプログラミング生活。


あれはあれで楽しかったよ。


ガラスが割れるように辺り一面が崩れていき、視界が真っ暗になった。

女神は終始笑顔だった。

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浸食世界 ~異世界ゲートを持つ男~ ににしー @NiniCy

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